教育・研究の推進

教育・研究の推進

地球益を目指し、環境問題にアプローチする前進基地

大学院地球環境学堂・学舎 嘉門 雅史 学堂長

 地球環境学堂・学舎は、地球益をめざして研究・教育に取り組んでいる大学院です。研究分野は19ですが、協働分野である研究科・研究所などを含めると約 100もの分野があります。環境に対する捉え方は多様ですが、それぞれの信念に基づいて融合・統合を図り、新しい環境学の確立をめざしています。そして、研究と教育で求められることが異なるため研究組織(学堂)と教育組織(学舎)を分けてはいますが、三才学林という組織を設置し、研究と教育をバランス良くつなげていく活動も展開しています。私が学生に期待することは、地球環境学専攻に進んだ人は研究者へ、環境マネジメント専攻に進んだ人は実務者へとそれぞれ突き進んでほしいと思います。学舎には多様な分野で学んできたバラエティに富んだ学生がいますので、人とのネットワークを大事にして相互に啓発し合ってほしいと考えます。

100年スパンの基礎研究と、すぐに役立つ研究の両方を

大学院人間・環境学研究科 冨田 博之 研究科長

 当研究科は、15年前に教養部教員を母体とした大学院を新設することになったとき、教養部の多彩な人材を生かすにはどうすべきかということで現代の人類が直面している総合科学的課題として「環境」というキーワードを取り入れました。環境問題は文明の問題といわれ、文明を構成する人間・文明を開くために環境に働きかける人間・その環境から影響を受ける人間といったそうした意味での人間のことを正確に知らずには解決できません。そのことを踏まえ、全体として環境問題を広く基礎から取り組む研究をしているのが人間・環境学研究科です。私が学生に期待することは、100年のスパンの基礎研究とすぐに役立つ研究双方に取り組んでほしいということです。そして、自分の専門の研究だけでなく他の分野についても学んでいってほしいと考えています。 ※詳細版では堀 智孝 副研究科長のお話も掲載しています。

生命・食料・環境を3本柱とする「命の基盤学」

大学院農学研究科・農学部 矢澤 進 研究科長

 農学は「命の基盤学」ともいわれ、生き物は他の生物の命を食べて命をつないでいく、ということを学び・知ることに基本的な姿勢をおいています。その上に、京都大学の農学部・研究科では幅広い分野を対象に、生命・食料・環境の3本柱で教育・研究に取り組んでいます。大きな特徴としては、生物資源経済学専攻の中に「農学原論」という分野があり、そこでは「農学とは何か」「農学とはどうあるべきか」を追求しています。また、農場や演習林・社会の中での実習に参加できるチャンスを1・2回生の段階で与えるようにしています。そのような現場を通じて、環境問題について少し違った視点からものを考えられるようになってほしいです。そして、1・2回生は基礎学力をつけた上で社会的企画力を身につけていってほしいと思います。当研究科が生産を通して社会に役立つことは今後も変わりません。そして、農業生産の中で環境問題や人間社会の問題についての研究を行い、日本や世界の抱える課題に対応できる学生を育てていきたいと考えています。

森・里・海をつなぐフィールド研究で、自然を見直す

フィールド科学教育研究センター 竹内 典之 副センター長

 2003年に発足したフィールド科学教育研究センターの役割は、森は森だけ・海は海だけを考えてきた自然科学の研究を一つにつなげることです。発足3年が経ち各分野での理解も進み、関心を持った学生も集まってきました。現在、森から里を経て海までのフィールドを流域としてつなぎ、生態系の動態や物質循環などを把握する研究が由良川などで始まっています。今では15の少人数セミナー(ポケゼミ)を全学へ提供しています。例えば、森里海連環学実習では、北海道研究林や芦生研究林・瀬戸臨海実験所・紀伊大島実験所(上賀茂試験地)などのフィールドを利用し、1週間の合宿で実習を行っています。森・里・海のつながりの中で、森は最上流に位置します。里や川や海の保全のためにも森の保全は必須の条件であり、森の健全性を保全することの重要性を伝えることが大切だと思っています。

作品3

多種多様なものの存在に関心を向け、それらを認める

大学院文学研究科・文学部 伊藤 邦武 研究科長

 文学部・研究科は、広くいえば人間の生き方を研究しているところです。人間を取り巻き何らかの影響を与えるのが環境ですから、私たちの研究とも無縁ではありません。実際、歴史や思想の分野では環境についての研究が積極的に進められています。

 また、応用倫理学には環境倫理学という自然と人間をテーマにした倫理学があります。これは広い視野を必要とし、大学環境なら大学環境、地球環境なら地球環境といったふうにある共同体を大きく捉え、その中で考えていく学問です。これからは、環境倫理学のようなものの見方・考え方が環境問題を解決していくためには重要となってきます。また、当研究科では、世界の東と西・過去と現在・空間と時間などさまざまな領域において研究を行ってきました。これは、グローバリゼーションに対抗しうる多様性を学んできたといえるでしょう。そして、この多種多様なものの存在を認めていくことこそが地球環境を考える上で有効になってくると思います。今年で文学部が誕生して100年になります。今後の展望としては、これまで培ってきた営みとそれを通じて得られた文化の堆積から「これから」へのきっかけを得られたらと考えています。

法学・政治学の基礎の上にこそ、環境に関する法的問題を

大学院法学研究科・法学部 森本 滋 研究科長

 法学部では環境法や公害法などの先端的な法律科目はありませんが、法科大学院においては環境に関連する講義をいくつか開講しています。まず一つめは「環境政策と法」。これは関西学院大学の曽和先生による講義です。二つめは「環境法」。香川大学の中山先生に隔週で来ていただいています。三つめは「環境法事例演習」で弁護士の村松先生によって行われています。このように、学部で法学・政治学の基礎を学んだあと、大学院において実践的に環境に関する法的問題について学べるようになっています。また、大学生活の基礎となるキャンパス環境の課題に対しても、周囲の木を切らないようにしたり、法経北館をレンガ仕様にしたりと取り組みのきっかけとなる活動を当研究科においてはじめています。これは、大学はものを考える場所であり学生のみなさんが快適な環境で教育を受けることが大切と考えているからです。そしてこのような観点をもってキャンパスを良くしていくためのアイデアを学生側から提案していただきたいと思います。

体内環境と自然環境とのつながりから「良い環境」を問う

大学院薬学研究科・薬学部 富岡 清 研究科長

 薬学の研究対象は主として体内環境ですが、薬化学研究の中には自然環境と直接関連する取り組みがありますのでご紹介します。この薬化学研究には大きく分けて二つのものがあります。一つは創薬化学といわれるもので「もの探し」の化学です。二つめはプロセス化学といわれ工場での開発研究を行う「ものづくり」の化学です。プロセス化学では、工業的製法のためにゴミなどの環境負荷も大きくなります。そのため、環境負荷を下げるためにグリーンケミストリー(詳細版で紹介)という考え方がアメリカを中心に広まっています。化学をやっている者にとって、グリーンケミストリーのような指針を守ることは簡単ではありません。しかし、合理的な目標をたてることは化学研究の進歩にとって制約ではなく、逆に革新的なことが起き、発展を促すことになると思います。また、人類の進化の過程の流れの中で、「何が良い環境か」を明確に判断するのは難しいです。サイエンスの歴史はまだ本格的に始まってから550年くらいで、今後もどんどん変わっていくでしょう。その中で新しい概念をつくっていくことが大学には求められていると考えています。

自然環境や自然現象を理解し、本質を掴む視点が必要

大学院理学研究科・理学部 北村 雅夫 研究科長

 理学研究科では、自然現象を研究対象とし、ある地形がどのようにしてできたのか、生物の起こりは何であったのかなどを研究してきました。最近では特定の環境負荷に関する研究や講義もあり、学生の志向もそちらに向いていると感じます。環境問題に取り組むためには「自然環境」を理解することが必要です。例えば砂漠化について考える場合、なぜそれが起こっているのかということに重きをおきます。その土地の地形・気候等を理解せずに植林をしても問題解決にはつながらないからです。このように「自然環境」を理解することから本質が見えてくるのではないでしょうか。そして、この視点を大切にしつつ、自然環境を理解するための教育・研究を広めることが当研究科の貢献の一つと考えています。

作品4

前のページへ |  教育・研究の推進 トップへ戻る

環境報告書2006ダイジェスト版トップページへ