2014年3月19日
内田由紀子 こころの未来研究センター准教授、荻原祐二 教育学研究科大学院生は、日本とアメリカの大学生を対象に調査を行い、アメリカにおいては個人主義傾向と親しい友人の数や幸福感には関連はありませんでしたが、日本においては個人主義傾向が高い人は、親しい友人の数が少なく、幸福感が低いことが判明しました。さらにこの関係は、日本において個人主義的で競争的な制度を導入している企業で働く成人にも見出されました。
この研究成果は、2014年3月5日付けのスイスの科学雑誌「Frontiers in Psychology」に掲載されました。
これからもグローバル化が進んでいくことを考慮すると、日本社会の個人主義化は避けがたいかもしれません。
こうした文化の過渡期において、自己と他者の独立性を担保した上で、人間関係の維持と構築を積極的に行うというような、個人主義社会で必要な心理・行動傾向を個々人が身に付けることが必要となると思われます。さらに、個人が孤立しないような社会的な制度や場を設計することも効果的と考えられます。
今後は、個人主義傾向が対人関係や幸福感に与える影響について、因果関係を含めたより具体的なプロセスの解明を行い、対人関係の不振によって生じる社会問題(ひきこもり、無縁社会化など)の解決・予防にも貢献していきたいです。
概要
グローバリゼーションに伴い、日本社会は個人主義化(個人の独立や自律を重視するように変化)しています。欧米においては、長い歴史をかけて個人主義が培われてきました。しかし、元来個人主義的な社会ではなかった日本においては、人々は個人主義社会(成果主義を導入する企業や個性重視を掲げる教育現場など)に必要な心理・行動傾向を身に着けておらず、日本に伝統的な規範や価値観との間に葛藤が生じています。その結果として、他者と親しい関係性を築くことができず、幸福感が低くなっている可能性があります。
本研究では日本とアメリカの大学生を対象に調査を行いました。その結果、アメリカにおいては個人主義傾向と親しい友人の数や幸福感には関連はありませんでしたが、日本において個人主義傾向が高い人は、親しい友人の数が少なく、幸福感が低いことが判明しました。さらにこの関係は、日本において個人主義的で競争的な制度を導入している企業で働く成人にも見出されています。
図:日本とアメリカにおける個人主義傾向、親しい友人の数、幸福感の関連
詳しい研究内容について
個人主義的な人は、親しい友人の数が少なく幸福感が低い -日本社会の個人主義化がもたらす負の側面を示唆-
書誌情報
[DOI] http://dx.doi.org/10.3389/fpsyg.2014.00135
[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/185084
Yuji Ogihara and Yukiko Uchida
"Does individualism bring happiness? Negative effects of individualism on interpersonal relationships and happiness"
Frontiers in Psychology Volume 5 Article 135
Published online: 05 March 2014
掲載情報
- 京都新聞(3月20日 29面)に掲載されました。