2014年2月25日
中島正愛 防災研究所教授らの研究グループは、鹿島建設株式会社、清水建設株式会社らと共同で、実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)を活用した、世界最大規模となる鉄骨造18層建物の1/3縮小試験体が崩壊するまでの挙動を検証する振動台実験を実施しました。
本実験は、本学、株式会社小堀鐸二研究所、独立行政法人防災科学技術研究所、株式会社大林組、鹿島建設株式会社、清水建設株式会社、大成建設株式会社、株式会社竹中工務店が取り組む、文部科学省からの委託研究「都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト-都市機能の維持・回復に関する調査研究-」の一環として実施されたものです。
今回の実験により、超高層建物の最終崩壊状態を確認することができ、そこに至るまでの部材の損傷の進行の仕方や、梁の破断や柱の局部座屈、破断などの部材の損傷と建物全体の安全性の関係を把握することもできました。また、モニタリングシステムにおいても最終倒壊までの各種データが取得されており、層の塑性化状況の把握や、部材の損傷状況を把握するためのシステム構築に関する貴重なデータを得ることができました。
このように鉄骨造超高層ビルのE-ディフェンスでの崩壊に至るまでの実験で、極めて多くのデータや新知見を得ることができました。今後、詳細なデータ分析やシミュレーション解析により、さらに多くの新知見が得られるものと思われます。これらの知見は今後の超高層ビルの設計や地震に対する安全性の評価に大いに役立つと考えています。
概要
東北地方太平洋沖地震は、東日本を中心に未曾有の大被害をもたらしました。首都圏でも事業や生活の継続が長期間妨げられ、大都市の脆弱性が顕在化しました。その教訓から、文部科学省は、委託研究「都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト-都市機能の維持・回復に関する調査研究-」を立ち上げ、その一環として、「鉄骨造高層建物の崩壊余裕度の定量化」と「建物健全度評価のためのモニタリングシステム開発」を目的に、鉄骨造高層建物を対象に徐々に破壊を進行させ最終的には崩壊させ、建物の余力等を検証する振動台実験を実施しました。(図)
今回の実験で得られた貴重なデータを基に、今後も詳細な検討を継続しますが、現時点で得られた結果は以下の通りです。
- 1980~90年頃に設計された標準的な18階建てクラスの鉄骨造高層ビルが、三大都市圏で想定される平均レベルの南海トラフ地震に対して、構造の損傷がほぼ継続使用可能状態に留まること、また想定される最大級の地震を超える平均レベルの2倍の地震に対して、2~3階の梁端に破断は生じるものの、倒壊までには十分な余裕があることを確認
- さらに大きな平均レベルの3.1倍の地震に対して、梁や柱の損傷が進行し、1~5階が大きく変形して、構造的な安全性の限界に近い状態になることを確認。ただし、完全に崩壊したのは、平均レベルの3.8倍の地震時であった。
- 今回の実験により、超高層建物が最終崩壊に至るまでの部材の損傷の進行の仕方や、梁の破断や柱の損傷と建物全体の安全性の関係を把握。また、モニタリングシステムで最終倒壊までの各種データが取得され、層の塑性化状況の把握や部材の損傷状況把握のシステム構築のための貴重なデータを取得
- 今後の詳細なデータ分析やシミュレーション解析により、より多くの新知見が得られ、今後の超高層ビルの設計や地震に対する安全性の評価に役立つ成果が期待される。
図:実験目的の概要
詳しい研究内容について
鉄骨造高層建物の崩壊までの挙動を検証したE-ディフェンス振動台実験の結果について