2013年12月10日
左から、工藤博 東京産業株式会社副部長 、佐藤敦政 アース株式会社代表取締役、豊原准教授、里見利夫 東京産業株式会社代表取締役社長
豊原治彦 農学研究科准教授は、アース株式会社、東京産業株式会社との共同で、従来洗浄分級が困難とされる75μm以下の微粒子分が多い農地土壌、側溝汚泥、焼却灰等の除染減容化技術実証試験を行い、これら全ての対象物について高効率に除去することに成功しました。
この技術により、東京電力福島第一原子力発電所事故による除染廃棄物量を大幅に減容化できることが期待されます。
除染減容システム/イメージフロー図
概要
当該技術は、除染除去によって回収され、集約されたことにより、汚染が高濃度となった除染廃棄物のうち、土壌、側溝汚泥、田畑の表土、焼却灰等を対象としています。従来の洗浄技術では、汚泥や田畑の表土は土壌粒子として最も微細なシルト、粘土分が土壌成分の大半を占めているため、分離が困難でした。また、焼却灰についても、灰の粒径が微細であるため、同様でした。
そこで当該技術は、ナノバブル水で洗浄分級することによって、放射性物質を土粒子や焼却灰から分離回収し、さらに、特殊なサイクロン分級システムを組み合わせることにより、セシウムが最も吸着されている2μm~5μmの範囲の微粒子を効率よく分離回収することが出来ました。また、汚染土壌および焼却灰を減容化することにより発生する、高濃度放射性物質濃縮物からの重金属や放射性物質が再溶出することが懸念されていますが、豊原准教授とアースで独自に開発された天然由来の資源からなる不溶化効果をもった吸着薬剤(アースプロテクター)を使用することにより、これらを完全に防止することが可能となったことがもう一つの大きな特徴です。
さらに、使用する設備には、不溶化された状態の高濃度放射性物質濃縮物を安全に遮蔽容器に格納させる、無人自動格納装置がシステムに組み込まれているため作業員の被ばく防止も考慮されています。
また、洗浄水に移行した放射性物質は洗浄水を再利用できることから、汚染水の発生・排出は無く、汚染の拡散はありません。また、化学物質を一切使用しないことから、水処理設備がコンパクトになり、低コスト化はもちろんのこと、移動式設備としての対応も可能であることも大きなメリットになるとされます。なお、技術・システムについては、本学とアース株式会社が共同で特許を取得しています。
試験結果
- 2013年1月に郡山市内で側溝汚泥減容化試験を実施し、最大8,748Bq/kgの側溝汚泥が1,761Bq/kgまでと80%除染でき、最終的に遮蔽容器に格納する濃縮物の量は全体の6%であった。
- 2013年6月に試験を行った那須塩原市クリーンセンターの焼却飛灰については最大10,879Bq/kgの焼却飛灰が約2,000Bq/kg以下にまでと約83%除染でき、最終的に格納する濃縮物の量は全体の約15%であった。
- 2013年8月に試験を行った南相馬市原町区馬場地区内の農地については最大13,796Bq/kgの表土が約1,000Bq/kgまでと約92%除染でき、最終的に格納する濃縮物の量は全体の約20%であった。特筆すべきは、農地については5,000Bq/kg以下は反転耕を行えば、作物の放射能濃度はクリアランスレベルの100Bq/kg以下まで下がることから、化学物質を一切使用しない当該技術を用いれば洗浄土はその場で再利用でき、中間貯蔵施設ができるまでの除染廃棄物の仮置きスペースを大幅に削減できることが期待できる。
なお、全ての実験において処理水の放射能濃度はND(検出限界以下)であった。
注釈
特許の取得内容
特許取得日:2012年8月17日
特許第5062579号
発明の名称:放射性物質を含む汚染土壌処理システム
- 朝日新聞(12月14日 4面)、京都新聞(12月14日 30面)、産経新聞(12月14日 3面)、中日新聞(12月14日 36面)、日刊工業新聞(12月16日 19面)、日本経済新聞(12月14日夕刊 8面)、毎日新聞(12月14日 2面)および読売新聞(1月10日 32面)に掲載されました。