2011年11月14日
左から石川教授、小泉教授
医学研究科環境衛生学分野(小泉昭夫教授)および防災研究所暴風雨・気象環境分野(石川裕彦教授)は、福島県成人住民の、環境を通じたセシウム134、セシウム137(放射性セシウム)への食事を介した経口、大気粉じんによる吸入曝露の評価を実施しました。その成果が日本衛生学会の英文誌Environmental Health and Preventive Medicineに掲載されました(発行元シュプリンガー・ジャパン)。
【論文情報】
Preliminary assessment of ecological exposure of adult residents in Fukushima prefecture to radioactive cesium through ingestion and inhalation
(福島県成人住民の放射性セシウムへの経口、吸入曝露の先行評価)
Koizumi A, Harada KH, Niisoe T, Adachi A, Fujii Y, Hitomi T, Kobayashi H, Wada Y, Watanabe T, Ishikawa H.
(小泉昭夫、原田浩二、新添多聞、足立歩、藤井由希子、人見敏明、小林果、和田安彦、渡辺孝男、石川裕彦)
Environ Health Prev Med. 2011 Nov 10.
- 論文は以下にオープンアクセスで掲載されております。
http://www.springerlink.com/content/v2p2327442667347/
http://dx.doi.org/10.1007/s12199-011-0251-9
http://hdl.handle.net/2433/149275 (京都大学学術情報リポジトリ(KURENAI)) - また和文翻訳が以下に掲載されております。
http://hes.med.kyoto-u.ac.jp/fukushima/EHPM2011.html
研究の概要
目的
本研究では福島県成人住民の、環境を通じたセシウム134、セシウム137(放射性セシウム)への経口、吸入曝露を評価することを目的としました。調査期間は2011年7月2日~8日でした。通常の食品モニタリングより測定時間を長くし、低濃度まで評価できるようにしました。また個別食品だけでなく、日々摂取する様々な食品を1日分ごとにまとめた状態で測定することでより実態に沿った摂取量を評価しました。
方法
成人一人の1日量の食事を代表するような55セットの食事(水道水を含む)を福島県内の4地域の商店で購入しました。また地域で生産された牛乳(21試料)、 野菜類(43試料)を購入しました。同時に12地点において、大容量空気捕集装置を用いた大気中エアロゾル採取を行いました。対照となる19セットの食事を京都府宇治市で2011年7月に収集しました。セシウム134、セシウム137濃度はゲルマニウム半導体検出器を用いて測定しました。
結果
福島県では55セットの食事の内、36セットで放射能が検出されました。京都府では19セットの内、1セットで検出されました。預託実効線量の中央値は年間3.0マイクロシーベルトであり、最小値は検出限界以下(年間1.2マイクロシーベルト以下)、最大値は年間83.1マイクロシーベルトでした。牛乳、野菜類のうち、暫定基準値(牛乳200ベクレル/キログラム、野菜類500ベクレル/キログラム)を超えたものはありませんでした。大気粉じん(ダスト)の吸入による実効線量は9地点で年間3マイクロシーベルト以下と推定されましたが、福島第一原子力発電所から半径20キロメートル地点の近傍では比較的高い線量を示しました(飯舘村:年間14.7マイクロシーベルト、浪江町:年間76.9マイクロシーベルト、葛尾村:年間27.7マイクロシーベルト)。
結論
福島県内での経口、吸入によるセシウム134、セシウム137への曝露が認められましたが、総じて、基準値以下でした。
- 朝日新聞(11月15日 5面)、京都新聞(11月15日 30面)、日本経済新聞(11月15日夕刊 15面)および毎日新聞(11月15日 27面)に掲載されました。