用語説明
1)ジベレリン(GA)

活性型ジベレリンGA4の構造
番号は炭素の位置を示す。
植物の生長、発芽、花芽の形成、果実の肥大促進など多くの生理現象にかかわる植物ホルモン。現在130種類以上の構造が報告されているが、その多くは、植物に対して作用せず、活性型ジベレリン(=植物が反応できるジベレリン)は、僅かである。ジベレリンは、1926年に黒澤英一によりイネの馬鹿苗病から発見され、1935年薮田貞治郎により単離、命名された。なお、植物には、ジベレリンの他に、オーキシン、エチレン、サイトカイニン、アブシジン酸、ブラシノステロイドの5つのホルモンがある。
植物が反応できるジベレリンの条件は、(1)6位炭素にカルボン酸がついていること、(2)3位炭素に水酸基がついている(3)γ—ラクトン環がある(4)2位炭素に水酸基がついていないこと、などが知られている。今回のGID1受容体の構造解析により、GID1受容体こそがこれらの構造的特徴を厳密に認識して結合するべきジベレリンとそうでない化合物を区別していることが明らかになった。以下、活性型ジベレリンの1つであるGA4の構造を示した。
2)リパーゼ(脂質分解酵素)
脂質の加水分解反応を触媒(化学反応を加速する作用)し、微生物から高等動植物まで広く存在する重要な酵素。
全体構造としては、βシートからなる骨組みのまわりにα鎖が取り囲んでいるα/β水解酵素型という構造をしている。活性中心にセリン、アスパラギン酸、ヒスチジンからなる触媒アミノ酸トリオとよばれる3つのアミノ酸と、オキシアニオン(負に帯電した酸素をもつイオン)結合部位とよばれる場所があり、それぞれがリパーゼの化学反応に必要な部品である。また、N末端側のアミノ酸60個ほどは、可動性の「ふた」を形成し、脂質が来たら開いて活性ポケットに受け入れる作用をしているといわれている。
3)受容体(レセプター)
外界からの化学物質(リガンド)を受け取り(結合し)、細胞にその物質を受け取ったという情報を伝えるタンパク質のこと。細胞での存在場所の違いにより、細胞外の表面に存在する受容体と細胞内にある(核内)受容体の2つに分類される。GID1受容体は、核内受容体である。多くの核内受容体は、DNAと結合できる転写因子とよばれるタンパク質で、リガンドが結合すると特定の遺伝子の読み出しをオンにしたりオフにしたりする働きをする。GID1受容体のように酵素から進化して、DNAの結合には関係しない核内受容体は、きわめて珍しい。