2009年5月21日
京都大学保健管理センター
冷静に受け止める
メキシコのある農村で生まれた新型のインフルエンザ(A/H1N1)が、北米各国のみならず世界的に流行しています。日本でも西日本で相次いで発症者が出て、警戒体制に入っています。
歴史的に見ると、今回と同様のブタ・インフルエンザは1976年に米国で小流行しています。また1977年に極東やアメリカで流行したソ連型インフルエンザも同じH1N1という抗原型を持っています。それらによって当時の人々が免疫を獲得したせいか、発症者は圧倒的に若い人に多くなっています。免疫を持っていない集団の中にいったん病原体が持ち込まれると、瞬く間に広がっていくのです。
不幸中の幸いというべきか、毒性は強くありません。しかし、持病のある場合や妊婦では重症化するおそれもあります。また、秋以降に強毒化する可能性も懸念されています。
このインフルエンザに効くワクチンは当分ありません。発症してしまった人はちょっと辛いのですが、これで免疫を獲得して今後同じタイプのインフルエンザにはかかりにくくなることが期待できますし、公衆衛生的観点からは集団免疫の成立にも貢献することになります。賢く行動してやり過ごしましょう。
賢く対処する
【予防の方法】
ふだん行っている風邪の予防措置を継続します。とくに石けんを用いた手洗いとうがいは重要です。アルコール・ゲル剤で手を揉むことも有効です。ふだんの運動やビタミンCの摂取も(効果はささやかですが)奨められます。これらの対策はインフルエンザ(通常型、トリ、ブタを問わず)に対する予防効果は実証されていませんが、論理的には有効と思われること、また少なくともインフルエンザよりはるかに多い普通の風邪の予防には有効であることが実証されていますので、ぜひ励行しましょう。
インフルエンザはほとんどが飛沫または接触による感染です。飛沫の飛ぶ範囲は1~2メートルですが、飛んで付着した飛沫に手が触れてしまう可能性は十分にあり、その手を口や鼻に持ってくることによって感染します。マスクは咳やくしゃみをする人が装着することに意味がありますが、至近距離から放たれた飛沫を遮る効果も期待できます。また病原体に触れてしまった手を鼻や口に持ってこないようブロックするのに役立ちます。ただし、汚れたマスクをいつまでもつけているのでは逆効果です。適宜交換しましょう。薬局やスーパーでディスポのマスクが手に入らなくても悲しむ必要はありません。昔風のガーゼ・マスク(手製でもOK)を一日の終わりに洗い、熱湯かアイロンをかけて消毒すれば何度でも使えます。
【発症時の対処】
熱がある、あるいは熱っぽい時は、自宅で安静にしましょう。学生は所属学部の教務に、職員は所属部局の担当者に電話で連絡を入れます。クラブ・サークルやアルバイトも禁止です。人混みに出てはいけません。食料や飲物は友人などに玄関先まで届けてもらいましょう。家族や友人と住んでいる人は別室にします。
高熱が出たり、熱に喉の痛みや咳を伴うような場合は、市町村が設置する発熱相談センターに電話をかけ、その指示に従いましょう。電話がつながりにくいときは保健管理センター(753-2405)にかけていただいても対応します。ただし、検査や治療は十分に行えません。インフルエンザであった場合、解熱しても2日間は登校・出勤停止です。
【発症者と接した場合の対処】
インフルエンザを発症した方と濃厚接触した方は、人との接触を避けて自宅で4日間待機します。何事もなければふつうの生活に戻ります。家族がインフルエンザにかかった場合は、その方が治癒するかその方と最後に接触してからさらに4日間、自宅で待機して自分が発症しないことを確認します。