京都大学メールマガジン Vol.78

京都大学メールマガジン Vol.78

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           京都大学メールマガジン vol.78

  http://www.kyoto-u.ac.jp/

■[2012年12月21日号 目次] ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◆1. トピックス
◆2. 理事からのメッセージ【学生・図書館担当理事・副学長 赤松明彦】
◆3. 特集【白眉センター 特定准教授 三枝洋一】
◆4. ニュース
◆5. イベント情報
◆6. 研究情報
◆7. 京大の「実は!」(Vol.2 「清風荘(2)建物編」)
◆8. 広報コラム

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 ◆1.トピックス 
  山中伸弥 iPS細胞研究所長・教授がノーベル賞授賞式に出席しました
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 12月11日に、スウェーデン・ストックホルムのコンサートホールにおいてノーベル賞授賞式が行われ、山中伸弥 iPS細胞研究所長・教授(物質-細胞統合システム拠点 連携主任研究者)がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
 授賞式では、カール16世グスタフ国王から山中所長にメダルと賞状が手渡されました。
 また、授賞式後には、ストックホルム市庁舎において晩餐会が開催されました。

 詳しい内容はこちらをご覧ください。
 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2012/121211_1.htm

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 ◆2.理事からのメッセージ 【学生・図書館担当理事・副学長 赤松明彦】
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 国際的に見ると、日本の大学の学費はとても高くて、その一方で奨学金などの公的な支援の率は極めて低いと言われている。今年もまた、OECDが発行するEducation at a Glance 2012: OECD Indicators (p.272, Chart B5.1.)には、高等教育における高負担低支援の唯一の国として日本があがっている。また、それとは別に、Global Higher Education Rankings 2010, Affordability and Accessibility in Comparative Perspective というのもあって、そこでは、「日本は奨学金制度(a system of grants)を全くもたない唯一の国である」と紹介されている。このレポートは、カナダにある高等教育戦略アソシエイツという組織が出しているものであるが、豪、加、英、独、仏、メキシコ、蘭、米、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、デンマーク、ラトヴィア、ニュージーランド、それに日本の15カ国における高等教育のアフォーダビリティ、つまり「お値頃感」と、アクセシビリティ、つまり「入りやすさ」を国際比較している。
日本にも、国費の給費留学生もいれば、奨学金返還免除制度もあるので、「奨学金ゼロ」(p.18)と言われると抗議をしたくもなるが、「奨学金」は給付が原則であり、貸与の「学資ローン」とは区別するのが国際標準だとすれば、「ゼロ」と言われても仕方ないかもしれない。そして、この「お値頃感」ランキングにおいて、日本は第14位で、メキシコが最下位。米は12位、豪は13位である。上位を占めるのは例によって北欧勢であるが、その表の欄外に但し書きがあって、「米とメキシコにおいては公立と私立の学費の差は大きいから、もし公立の大学だけを比較するなら、米は9位の加と同じ、メキシコも豪と同じランクとなろう」とされている。つまり、日本だけがダントツの最下位ということになるのである。
 そういった点も踏まえて、留学生に対しては、大学間の学生交流協定を結んで授業料を不徴収にしたり奨学金の制度を手厚くしたりして対応することになるのだが、真に国際的な評価をあげるためには、留学生と自国の学生を区別するのではなくて、留学生も含めた学生全般に対する支援を、これまでの何倍もの努力で、政府も大学も行う必要があるだろう。その場合、なにより望ましいのは、給付の奨学金制度を作ることである。そうすれば、先頃留保を撤回した国際人権規約に則った「高等教育の無償化」の実現に近づくことにもなる。学生支援の国際化とは、留学生を特別扱いすることではない。学生担当理事としては、まさに留学生も含めた学生全体の支援の充実をはかることを目指したい。

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 ◆3.特集 【白眉センター 特定准教授 三枝洋一】
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 私は京都大学の白眉プロジェクトにて数学の研究を行っています。より詳しい研究テーマは、整数論のラングランズ対応という問題についてなのですが、これがどのような問題で、どう面白いのかを書いてみたいと思います。
 整数論の古典的な問題に、次のようなものがあります:
 p を素数とするとき、x^2-2 が p で割り切れるような整数 x は存在するでしょうか?(数式中のx^2はxの2乗の意味)
これは、いわば「p で割った余りの世界」における2次方程式を解く問題といえますが、実はこれには綺麗な答えがあります。では、似たような問題を3次以上の方程式、あるいは多変数の方程式で考えてみるとどうなるでしょうか。こうした問いに系統的な解答があることを予測するのが、ラングランズ対応という予想なのです。
 数ある未解決問題の中で、特にこの問題を面白いと思う理由は3つあります。
 まず1つ目は、昔からの素朴な問題と結び付いている点です。フェルマー予想や佐藤・テイト予想などの専門知識なしで理解可能な有名問題が、ラングランズ対応の一部を解くことによって解決されてきたことは大きな魅力です。最近は白眉プロジェクトで数学以外の分野に触れることがよくあるのですが、やはり面白い研究は素朴な問題意識に端を発することが多いように感じます。
 2つ目は、実際に問題を解決する際には非常に高度な数学的技術が必要になるという点です。数学においては、優れた問題が理論の発展・深化を促すということがありますが、その典型例だといえるでしょう。私が主に使っているのは、整数論と幾何学を融合させた、数論幾何学という技術です。大学院生の頃は、この技術を磨くのに一生懸命になっていましたが、スケールの大きな問題に導かれ、ようやく少しずつ視野が広がってきたような気がします。
 3つ目は、他分野との関わりについてです。ラングランズ対応は純粋数学の問題ですが、不思議なことにそれが弦理論などの物理学と密接に関連していることが分かってきています。ラングランズ対応に関する近年の進展の主要因の一つに「基本補題の解決」というものがありますが、その最終段階は、数理物理で考察されていたヒッチン束という対象を整数論に持ち込むことで達成されました。こうした自律的な異分野間の相互作用こそが、数学における正しいグローバリゼーションのあり方であるように思います。
 数学をやっていると、実生活に役に立つのかということをよく聞かれますが、量子力学・相対性理論からコンピュータ技術、暗号・符号理論に至るまで、現代に生きている数学はいずれも過去の数学者が純粋な知的好奇心のもとに発明してきたものだと思います。幸い私は現在恵まれた環境で研究することができていますが、今後も数学者が自由な精神で研究できるような社会環境が維持されることを強く望みます。

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 ◆4.ニュース
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 京都大学の最新のニュースを紹介します。

 ○第55回京都大学未来フォーラムを開催しました
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 12月5日(水曜日)に、第55回京都大学未来フォーラムを開催しました。今回のフォーラムは、本学工学部卒業生でGCAサヴィアングループ株式会社取締役の佐山展生氏を講師に迎え、これまで歩んできた自らのキャリアを紹介するとともに、一見困難に見えることでも自分が面白いと感じたことに覚悟をもってチャレンジしつづければ成功への道は開けていること、またM&Aの目的と実情、企業価値の評価方法など、幅広くお話しいただきました。

 続きはこちらをご覧ください。
 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2012/121205_1.htm

 ▼その他のニュースはこちらからご覧いただけます。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja?type=monthly&;news=on

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 ◆5.イベント情報
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 京都大学では、様々なジャンルのイベントを多数実施しています。

 ○第32回品川セミナー (2013年1月11日開催・要申込)
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 京都大学には、学部や大学院のほかに、現在22の附置研究所と研究センターがあります。これらの研究所群が一体となって学問の最先端の様子を広く一般の方々にお届けし、その声を直接お聴きすることを目的として、東京・品川で連続セミナーを開催しています。
 第32回目の今回は、エネルギー理工学研究所 森井 孝 教授を講師として「体のなかにある分子コンビナート」についてお話をします。

 詳しい内容はこちらをご覧ください。
 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2012/130111_1.htm

 ○レクチャーシリーズno.108 ジュニアレクチャー 「ノーベル賞と京都 ~新聞記者の目から~」 (2013年1月12日開催)
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 山中伸弥 iPS細胞研究所長・教授をはじめ、日本の歴代のノーベル賞受賞者には、京都・京都大学に関わり深い人が多くいます。地元紙として科学・大学関連の取材を長く続けた縁で、故・福井謙一氏以来、益川敏英氏、田中耕一氏など、ほとんどの受賞者の人となりに触れてきた尾古俊博 氏(元京都新聞記者(科学部記者、文化報道部編集委員など))をゲストスピーカーとしてお招きし、その体験を振り返り、独創的な研究者がなぜ京都で育つのかを参加者と共に考えます。

 詳しい内容はこちらをご覧ください。
 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2012/130112_1.htm

 ○第8回 京都大学附置研究所・センターシンポジウム 京都からの提言 21世紀の日本を考える 「科学が見いだす日本の進路」 (2013年3月16日開催)
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 京都大学附置研究所・センターシンポジウム「京都からの提言 21世紀の日本を考える」は、京都大学に附置されている研究所・研究センターが共同で開催する公開のシンポジウムです。各研究所・研究センターの活動や生み出されている研究成果を学界、産業界をはじめ広く一般社会に対して、わかりやすく説明することで、研究・教育活動、社会貢献活動への理解や支援・協力を得ることを目的としています。(※本シンポジウムは北海道札幌市での開催です。)

 詳しい内容はこちらをご覧ください。
 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2012/130316_1.htm

 ▼他にも多くのイベントを予定しています。
  詳しくはこちらからご覧いただけます。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja?type=calendar

 ▼また、広く一般の方にもご参加いただける公開講座、講演会、シンポジウム
  などはこちらをご覧ください。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/education/open/open_course/index.htm

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 ◆6.研究情報
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 京都大学の最新の研究成果5件を紹介します。

○電力変換装置の損失低減と信頼性向上を実現するSiCトランジスタを開発-リーク電流90%減・絶縁耐圧1.5倍で低炭素社会に貢献
 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2012/121211_1.htm

○神経難病・筋萎縮性側索硬化症の原因に蛋白質分解異常が関与する可能性-遺伝子改変マウスでの知見から-
 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2012/121210_1.htm

○ヒトiPS細胞に発現しているタンパク質を世界最大規模で網羅的に検出-iPS細胞の多能性機能解析のための第一歩
 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2012/121207_2.htm

○Hes7遺伝子のイントロン削減による分節時計の加速化
 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2012/121207_1.htm

○ヒトのミトコンドリアにおけるNADP供給源の特定とその意義
 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2012/121205_2.htm

 ▼そのほかにも多数の研究成果を発表しています。
  詳しくはこちらからご覧いただけます。
  http://www.kyoto-u.ac.jp/ja?type=monthly&c2=4

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 ◆7.コラム 京大の「実は!」
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 京都大学には、実は・・・こんなステキなスポットがある!
 京都大学には、実は・・・こんな知られざる歴史がある!

 など、京大の「実は!」な魅力を紹介します。

 ○Vol.2 「京都大学には、実は「大学所有の重要文化財がある!~清風荘(2)建物編~」

 メールマガジンvol.77にて、紅葉真っ盛りの庭園を主にご紹介した、京都大学初の指定重要文化財(建造物)である「清風荘」。本学の迎賓、会議目的で利用しており、一般には非公開の施設です。
 第2回目は「建物」にクローズアップし、その内部も含めて詳しくご紹介します。

 清風荘の起源をたどると、享保17(1732)年頃徳大寺家の別邸として建築されたもので、その後住友家の所有となり、西園寺家がそれを使用していたものです。現存する家屋などは西園寺公望公の時代に改築増補したものですが、特に邸内の茶室と改築された庭園は名高く、茶室は貴人口(きにんぐち)と称して珍重され、また敷地面積の9割を占める庭園は、作庭家として高名な小川治兵衛氏(植治)の作庭で知られています。
 現在の建物は、主に当時名工と謳われた大阪の大工・八木甚兵衛氏の手によるもので、明治43(1910)年に着工し、5年を費やして竣工しています。工期が長くかかったのは、建材の選択と乾燥によるものと考えられます。建物の造営には公自身が材料や形式について細かく指示されたというだけあって落ち着いた気品が漂っています。
 四季折々の表情を魅せる自然美に溶け込みつつも、しなやかな存在感を醸し出す建物風情は、庭園に劣らぬ価値があります。

 続きはこちらをご覧ください。
 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/issue/mm/jitsuha/2012/121221.htm

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 ◆8.広報コラム
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 2012年も残すところわずかとなりました。
 本メールマガジンもこの12月号が年内最終発行号となります。
 この1年を振り返ると、京都大学には実に様々なトピックスがありました。数ある中で一つを取り上げるとするならば、そのニュース性の大きさから、やはり山中伸弥 iPS細胞研究所長・教授(物質-細胞統合システム拠点 連携主任研究者)のノーベル生理学・医学賞受賞でしょう。この世界的な栄誉をめぐって、ここ京都大学渉外部広報・社会連携推進室も、慌ただしくも喜ばしい貴重な経験をさせていただきました。
 ノーベル賞受賞決定以降、メディアに掲載される山中先生関連の情報は枚挙にいとまがありません。受賞の栄誉、ノーベルウィークの先生の動向はもちろんのこと、それ以上にクローズアップされたのは、先生の研究に対する実直さ、真摯で人情味溢れる人柄、人間性の素晴らしさです。
 受賞以降、様々な場面で表現される先生の言葉には、一貫した強い信念が感じられ、まさに京都大学の誇りだと心から実感します。
 京都大学には、そのような素晴らしい研究者、そしてこれからの可能性を秘めた学生がたくさんいます。彼らの研究活動をより広く、より魅力的に発信できるよう、私たち広報担当者は、今後も精一杯努めていきたいと思います。
 2013年も、素敵なニュースをたくさん皆様にお届けできますように。

                       [渉外部広報・社会連携推進室]

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