「京大って、どんな大学?」
そうたずねられた時、ひと言で答えるのはなかなか難しいものです。
「自由の学風」「対話の精神」「自学自習」「歴史有る大学」「個性的」「研究に強い」「イカ京」・・・
京大を表現する言葉はたくさんあるけれど、それらを並べたところで、うまくお伝えしきれていなかったのが正直なところです。
「京大って、こんな大学です!」 と、京大の魅力を、もっとわかりやすく、もっと楽しく、たくさんの人に伝える方法はないものか・・・。
そんな超難題に挑むゲーム型サイト、「探検!京都大学 モバイル版」を5月13日(金)に新たに公開しました!
http://www.mendoksa.pr.kyoto-u.ac.jp
今回の「京大の実は!」では、「いちいちめんどくさい!」と話題の「探検!京都大学 モバイル版」の見どころと、制作ストーリー(主にウラ話)を一挙大公開します!
そもそも、なんでブランドサイト?
企業の面接でも、お見合いでもそうですが、本当に求めている人と巡り会うためには、自己PRをしっかりしなきゃいけません。
京大は、確かに知名度はあるかもしれないけれど・・・名前だけじゃ中身は計れない。
「京大の理念」はいろいろあるけど・・・理念てぼんやりして分かりづらい。
「京大のデータ」もわんさかあるけれど・・・スペックだけじゃ魅力までは語れない。
今、必要なのは、京大ならではの強みや魅力、価値観といった「京大のアイデンティティ」を、もっとわかりやすく伝えていくこと!
「おもろい」ことをどんどん仕掛ける大学へ。「京大おもろい化」計画スタート!
そこで京都大学では、2014年10月に就任した山極総長の「「おもろい」ことをどんどん仕掛ける大学へ」というメッセージを実現するため、京都大学創立以来初となる「主体的に仕掛けるブランド戦略」をスタートしました。
その取り組みの一つとして誕生したのが、2015年4月に公開したスペシャルサイト「探検!京都大学」( http://www.kyoto-u.ac.jp/explore/ )。
積極的に個性や魅力に満ちた「京大らしさ」を強く打ち出すことで、あらたなブランドイメージの発信とファン層の拡大を狙って制作したサイトです。
新たに誕生!「探検!京都大学」モバイル版とは!?
その「探検!京都大学」で表現した「探検」や「フィールドワーク」といったコンセプトを大事にしつつ、ユーザーが自ら主体的に進んでいけるゲーム的要素を盛り込んだのが、今回新たに誕生したモバイル版サイトです。
そもそも、総長が考える「京大らしさ」とは?
山極総長が就任以来、さまざまな場で発信し続けていることがあります。
「京都大学の学生や研究者は、常に他の人と違うことを発想しようとし、合理的なことやそれがいったい何のためになるかではなく、まず「おもろい」ことを考える。一見無謀だと思われることに自分で問を立てて、果敢にチャレンジする。
分野を超えて異なる能力や知識や発想に出会い、対話を楽しみながら、自分が本当に向き合いたい問いと向き合う。
決して一筋縄にはいかないし、時間がかかるかもしれない。一見すると、とても無意味に思えるようなことにこそ、新たな発見やひらめきに繋がるヒントがある。」
という、京大らしさを伝えるメッセージ。
そう、それを人は「回り道」というのです。
「回り道の精神」。それこそが、京大らしさを表現するコトバじゃないか! そんな思いからこのサイトは誕生しました。
そして、その「回り道」に、さらに京大らしいエッセンスを加えて変換したコトバこそが、今回のコンセプトである 「めんどくさい」 。
モバイル版のコンセプトは、ずばり、「めんどくさいサイト」です。
ゲームを通して、ユニークでディープな京大ワールドを知るだけでなく、すぐに答えが見つからない「めんどくささ」を「楽しい」と思える体験を提供します。
「いちいちめんどくさいサイト」って、どんなサイト!?
このサイトは、回り道をしないとゴールにたどり着けません。
通常のサイトに求められる、見やすさ、使いやすさといった常識を破って、「めんどくさい」ことだけを追求した、今までに無い全く新しいサイトです。
これは、京都大学が創立以来大事にしてきた「回り道」の精神(※)=「めんどくさい」ことを楽しめるユーモアこそが、将来イノベーションを起こす人材に必要な素質の一つである! という考えに基づいています。
※京都大学が創立以来大事にしてきた「回り道」の精神
短期的な研究成果や効率的な研究手法のみをもとめるのではなく、多少遠回りをしても多様な発想や思想に出会いさまざまな経験をすることで、誰も思いも付か なかったひらめきや発明につながるという研究スタイル、または既存の学問領域から飛び出して、様々な知識に触れ学びを深める精神を意味する。
「探検!京都大学」モバイル版の「めんどくささ」(見どころ)を、一部ご紹介!
ゲームはすごろく形式で進み、「マニアックなクイズ」や「こじらせ系のキャラクター」「防ぎようのないトラップ」など、次から次へと巻き起こる「めんどくさい」仕掛けに、スマホを何度も投げ捨てたくなる衝動に駆られながらも、クリアを目指します。
めんどくさっ!①「京大はこじらせ系学生や研究者のパラダイス!」
登場するキャラクターは、みんなどこか「めんどくさい」。
このサイトには、ほっこりするゆるキャラや、かっこいいヒーローキャラは一切登場しません。性格やしゃべり方などクセが強く、京都大学のマニアック過ぎるクイズを出題してきたり、役に立つ可能性は極めて低い豆知識を延々と披露してきたり。
★もっと詳しくキャラについて知りたい人はこちらもチェック。 ⇒ 「めんどくさいキャラクター図鑑」
めんどくさっ!②「次から次へと起こるハプニングで、進みたいのに進めない!」
そしてこのサイトでは、予期せぬめんどくさいハプニングが、あなたの行く手をとことん阻みます。研究と同じ。一筋縄ではいきません!
そのハプニングの多くは、「そんなん知らんしっ!」と思わず突っ込みたくなるようなめんどくさいもの。遭遇するたびに、あなたは強引にスタートに引き戻されたり、進みたいのに進めないもどかしさに苦しむことでしょう。
しかし、ここに出てくるハプニングのほとんどはノンフィクション。京大でリアルに巻き起こる日々の出来事でもあるのです。
めんどくさっ!③「ひたすらスクロール21万回を強要!?… 挑戦するか否かは、あなた次第」
ある日ふと、「地上から地球の中心までの距離が京大の時計台の何塔分になるんだろう?」という疑問を抱いた神イカ京。
彼のめんどくさい疑問を確かめるため、スマホの1スクロールを時計台1塔分として地球をとことんスクロールして掘っていくトラップに、予期せずあなたは出遭ってしまうかもしれません。但し、検証するかしないかはあなた次第。
必要スクロール数は約21万回、1秒間に5スクロールできれば、最短で約11時間50分で到達。恐ろしくスマホのバッテリーを消費させます。指がつってしまうかもしれませんし、その異様な動きに周囲から怪しげな視線を注がれるかも知れません。
そんな危険を顧みず、ただひたすら掘り下げた先にあるものとは・・・? それはあなた自身で検証してみて下さい。
◆ ◆ ◆
そんな、さまざまなめんどくさい仕掛けに果敢に挑戦し、先生がいるコマまで進むと、先生に関するクイズが出題され、正解するとそのキャンパスはクリア!
すべてのキャンパスをクリアすると、第2ステージ「未来ステージ」が出現。それをクリアすると、驚愕の真実が明らかに~ッ!!
◆ ◆ ◆
・・・ここから先は、ぜひあなた自身で体験を。但し、クリアする意味があるかどうかは、あなたが判断してください。
めんどくさいサイトとともに歩んだ約8ヶ月。その汗と涙の制作秘話をご紹介。
2015年10月某日、制作会社と広報課担当者(広報Y&B)との「めんどくさい」戦いははじまった・・・。
この先、とんでもないめんどくさいワールド(および担当者)に苦しむことになろうとは、制作会社も知るよしもない。
①「めんどくさい」企画がスタート!
広報Yは悩んでいました。
「中高生に、偏差値だけではない、京大の学風や魅力に共感して京大を志願してほしい。でも、本当にそれが伝わっているのだろうか・・・?」
そう悩んだ末たどり着いた、「そうだ!京大が大事にしてきた「回り道」の精神を「めんどくさい」というコンセプトで、しかもゲームの世界で実現しよう!」という考え。
広報Y:「むちゃくちゃめんどくさいサイトにしたいんです。」
制作会社:「えっ・・・」
めんどくさい広報Yの要望に挑んでくれた寛容な制作会社チームとともに、構成とコンセプト設計がスタート。
「めんどくさい」という一見ネガティブな表現を使って、「京大の回り道の精神」をどう表現し、大学のメッセージをどう伝えるか・・・。
試行錯誤の末、めんどくささを、「クイズ」や「ハプニング」、「トラップ」などを盛り込んだすごろくゲーム形式にして表現することにしました。
②「めんどくさい」ネタ集め!
コンテンツのネタ元は、「探検!京都大学」PC版の既存コンテンツや、本コラム「京大の実は!」のバックナンバー等からピックアップすることに。しかし、このサイトのキモとなるネタやハプニングは、それらだけではどうしても物足りない・・・。
もっと、もっと、リアルでマニアックな京大ネタを詰め込みたい!
・・・ということで、現役京大生へのヒアリングを行うことに。
リアルな京大ネタを盛り込むため、現役京大生によるヒアリングを実施。
手前右から、学生参加者(栗原桃香さん(法学部3回)、西村理沙さん(理学部4回)、
中西一之さん(経済学部4回)、安藤悠太さん(工学部4回)。所属は当時)。左は制作会社チーム。
京大愛に溢れた学生たちからは、京大生ならではの「あるあるネタ」が、出るわ!出るわ! しかも、かなりのマニアック度。制作会社も思わず爆笑してしまうネタの数々。サイトには、すべてを採用できていないのが非常に心苦しいところです・・・。
ヒアリングでビシビシ感じられたのは、みんな「京大が好き過ぎる」ということ。
華やかな私大にも、シュッとしたT大にも、もちろん憧れはあるものの、・・・やっぱり京大が好き。
そんな深~い京大愛を感じるヒアリングでした。サイトには、そんな彼らの声を主に「ハプニング」に詰め込んでいますよ!
③「めんどくさい」キャラクター設定!
ゲームと言えばキャラクター。妄想から生まれた伝説の「神イカ京」。
京大でキャラクターといえば、やっぱりイカ京は外すわけにはいかない!
・・・という広報Bのめんどくさいこだわりにより、ゲーム全体を象徴するメインキャラを創り上げることになりました。
広報B:「イカ京・・・、いや、神レベルのイカ京を作って下さい。」
制作会社:「えっ・・・」
そこで誕生したキャラが 「神イカ京」 。広報Bが思い描く理想のイカ京像をキャラ設定に落とし込みました。
設定上は「伝説の神イカ京」としていますが、生息している可能性はゼロとは言えません。京大にきて、確かめてみることをオススメします。
こだわりのキャラ誕生まで
その他のキャラクターも、細部までこだわり、より実物に近いキャラに仕立て上げました。そのこだわりは制作会社もあきれるほど・・・。
隠れキャラの実は!
サイトには、先生以外にもさまざまなキャラクターが登場します。中には、京大ならではのレアキャラも。その誕生ウラ話をご紹介。
「広報B、公聴会後のパズルくん捕獲」
「ビラがパズルの人」で既に有名人の、パズルくんこと、東田くん。 世界で唯一のパズル学博士であり、「京大・東田式」としてパズル本を何冊も発行しています。
彼もサイトに絡めたいなあ~と妄想していた広報Bの元に、「パズルくんが、博士論文の公聴会をするらしい」との情報をキャッチ。すぐに駆けつけ、公聴会後のパズルくんを捕獲。「めんどくさいサイト」への協力を強引に依頼し、快く引き受けてくれたのでした。
サイト内でも、パズルくんが直筆ビラを配っていますよ!
「広報B、尾池元総長を四条大橋で捕獲」
総長カレーのネタをクイズにすることを決めた広報B。せっかくなら、総長カレーの生みの親である尾池和夫元総長もキャラにしたいなあ~と妄想していたところ・・・
時を同じくして、休日の四条大橋を歩いていた広報Bの目の前に、アポイントを取りたいと思っていた尾池元総長が! 面識がないにも関わらず、思わず声をかけてしまった広報Bの強引なお願いに快諾してくださった心広き尾池元総長。
神のお示し! ・・・いや、神イカ京のお示し!と思わず手を合わせたのでした。
④「めんどくさい」仕掛けづくり!
もっと、もっとめんどくさい仕掛けを! めんどくさいトラップ「穴掘りゲーム」誕生秘話。
さらに広報課の「めんどくささ」へのこだわりは止まるところを知らず・・・
うーむ、ただすごろくで進んでいくだけではつまらない。「回り道の精神」をより再現するには、もっともっとめんどくさい仕掛けが必要だ!
広報Y:「もっとめんどくさい、スマホのスクロールを生かした仕掛けを入れましょう!」
制作会社:「えっっ・・・(めんどくさっ)」
スマホの操作性といえば、「スクロール」。そのシンプルすぎる、スクロールという操作を生かした仕掛け・・・。「どこまでめんどくさい大学なんだ!」という制作チームの声が聞こえてきそうでした。
そこでヒントになったのは、広報Bに届いたある1件のメール。
京大OBが京大での日々を綴った文章に出てきた、「ある日突然寮の前に大きな穴が掘られる」という、何とも京大らしいこんなエピソードから。
『ある日突然寮の前に大きな穴が掘られていた。どこまで穴を掘れるのか、やってみようという実験からスタートしたらしい。そのパワーを他のことに使えないのか、という質問は禁止されている・・・。』
ふと思い浮かんだ「問い」を、実際に検証する。とことん深掘りする。それに意味が有る無しにかかわらず・・・。
「深掘り」、「穴掘り」・・・これだ!
・・・そんなアイデアもヒントにしながら行き着いたのが、ひたすらスクロールで穴を掘る(地獄のような)ゲーム。
「1秒間に5スクロールできれば、最短で約11時間50分で到達できます。必要スクロール数は約21万回。これならいけますね!」。
いや、いけますねじゃないでしょ・・・と、突っ込む人は誰もおらず、そのまま採用されたのでした。
⑤「めんどくさい」検証&確認作業!
作業も大詰め。「めんどくさい」サイトであるがゆえ、さらにめんどくさい地獄への扉が開く・・・
ひとしきりコンテンツの制作が完了した後にも、さらなるめんどくさい作業は続きます・・・。
「検証地獄」
そう。このサイトはめんどくさいがゆえに、検証作業も一筋縄ではいかないのです。しかし、問題なく挙動するかどうか、公開前にしっかりと確認する作業は不可欠。あまりのめんどくささに、制作会社さんが京大を嫌いにならないことを祈る日々・・・。
特に、スクロール21万回の穴掘りゲームの検証は、まさに地獄。制作会社の担当者は、クリアするのに累積すると20時間以上はかかったとのこと・・・。感想は「スマホから摩擦で火が出るんじゃないか」「指紋が消えてツルツルになってまうかも・・・」とも思ったそうです。
ほんと、ご苦労様です・・・。
「キャプチャチェック地獄」
さらに、クイズや小ネタ、ハプニングなど、大量のシナリオチェックを終えた後は、実際にそれらがゲーム画面に表出したものもチェックせねばなりません。山のようなキャプチャをチェックする地獄のような作業へ。
制作会社には、急遽「キャプチャレディ」が配置され、ひたすら、画面を出して、キャプチャをコピペするという、これまた地獄のような作業をされていたそうで・・・。しかも、何度やっても出てこない画面、逆に何度も出てくる画面もあり、キャプチャレディさんにはかなりのストレスを与えてしまったことでしょう。
この場を借りてお詫び申し上げます。めんどくさくてごめんなさい!
こうして、数々のめんどくさい作業を経て、やっと公開にいたった「探検!京都大学」モバイル版。
みなさま、ぜひこのめんどくさいワールドを体験してみてください!
・・・そして、究極の「回り道」を体験した後は、リアルな京大へ来て、あなたの目で検証して下さい。
制作会社へのインタビュー!
「探検!京都大学」モバイル版の制作、どうでしたか?
いや-、とにかく「めんどくさかった」です(笑)。思った以上に・・・。
サイトの方向性が決まり、制作を進めていく中で、「本当に京大がこんな突き抜けたサイトにして大丈夫なんだろうか・・・?」「総長は本当にOKするのか・・・?」等、作りながらいつもドキドキしていました(笑)。「さすがにここまでしたらダメだろうなあ」と思いながら提案しても、思った以上に京大さんがOKだったのが意外で、「え?これもアリなの?」と・・・。
でも一緒に制作を進めていくうちに、京大さんの中で、「めんどくさい」というコンセプトで表現したい「京大らしさ」や「京大の理念」に一本筋がしっかり通っていることがわかったので、安心しながら進めることができました。
正直に言いますと・・・京大については、もっと斜に構えたというか、固いイメージがあったのですが、それが全然違って。私たちも制作に携わりながら、必然的にどんどん京大知識を深めていったわけですが、知れば知るほど、京大おもろすぎるっ!と思いましたね。ゲームにはそのほんの一部しか盛り込めきれませんでした。
このサイトで一番難しかったところは?
ゲームの仕様を複雑にしすぎずに、「シンプルだけどめんどくさくする」、そのさじ加減が難しかったですね。いろいろ悩んだ結果、めんどくささを表現するために、クイズやハプニングなどの演出をめいっぱい盛り込むことにしました。それらのネタは、もともと京大さんが蓄積していたメルマガのコラムや、「探検!京都大学」PC版といったコンテンツがあったからこそ実現できたものです。
学生ヒアリングも大きかったですね。リアルな京大生たちの魅力に触れて、より「京大らしさ」を感じられた気がしました。
広報課より、みなさまへメッセージ
本来、「めんどくささ」を楽しめるユーモアは将来イノベーションを起こす人材に必要な素質の一つと京都大学は考えています。そして、そのようなユーモアを持った学生に京都大学を志願してほしいと思っています。
一方で、今回、「めんどくさい」ことが「楽しい」と思える体験をどう提供するかを考える中で、そもそも「めんどくさい」というコンセプトを、すぐに答えを求める傾向がある若年層が受け入れてくれるだろうかという不安もありました。
でも、途中で投げ出したくなる気持ちと、マニアックな知的好奇心からついついやってしまう気持ちとのぎりぎりのバランスをゲームという形で実現できたと思っています。
ぜひ、中高生はもちろんこと、保護者のみなさま、一般の方にもこのサイトを通じて、そのようなユーモアを感じていただき、京都大学が持つ本当の魅力を知っていただければ幸いです。