新年の抱負として今年のひと言を書きました。(2018年1月5日)

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皆さま、新年あけましておめでとうございます。

今年も新年の抱負を一筆したためました。

「賢く群れる」

今年は戌年です。イヌと言えば、リーダーに忠実で上下の関係をよくわきまえて行動することが知られています。人間との付き合いも長く、忠実な友として人間圏の奥深くまで入って暮らしてきました。私が長らく調査してきたサルとは「犬猿の仲」と称されて相性が悪く、それは昔から野荒しをするサルをイヌによって追い払ってきたためだと考えられます。

イヌもサルも群れで暮らしますが、群れの作り方はまるで違います。イヌは、リーダーを中心に狩りをするために統率のとれた体制になっています。一方、植物食のサルは狩りをせず、あちこちに点在する果実や葉を効率よく安全に食べるために群れを作っています。食べるときには仲間と競合しないように分散し、休むときは安全を期すために集まります。人間は系統的にサルと近く、イヌのようにリーダーに忠実な統制のとれた集団を作るのは苦手なはずです。

さて、俗に「京大生は群れない」とよく言われますが、その真の意味は「京大生は自立独立の精神を持ち、仲間にむやみに迎合しない」ということだと私は思っています。初代総長の木下廣治は「自重自敬」という言葉を残し、自らを重んずる心は互いに尊重しあう心に通じることを説いています。これは「対話を根幹とした自由の学風」という本学の伝統的な精神風土を生み出しました。むしろ、京大生は「闊達な対話を通じて、他者に頼らない自由な発想を磨くために集まる」ことを好むはずなのです。

私たち大学で働く教職員も、それぞれの強みや個性を尊重しながら、喜びも苦労も分かち合い、同じ目的に向かって一緒に歩んでいきたいと思います。

本年も、京都大学をどうぞよろしくお願いいたします。

2018年1月5日 京都大学総長 山極 壽一