巨大な構造転移を伴ったモット絶縁体の金属化に乾電池1個に満たない電圧で成功 ~さまざまな低電力動作のデバイス実現に期待~
用語解説
抵抗変化型メモリー (ReRAM)
電圧の印加による電気抵抗の大きな変化を利用したメモリー素子。金属酸化物と電極の界面での抵抗変化や、金属酸化物の中での抵抗変化を用います。強相関電子系のマンガン酸化物や、チタン、ニッケルの酸化物などが用いられ、最近では量産化を目指した動きも盛んです。
強相関電子系(Strongly correlated electron materials)
導電性を担う電子同士に働く有効な静電斥力(クーロン斥力)の効果が強い物質を呼びます。4f、5f電子が電気伝導を担うセリウムやウランなどの化合物に見られる重い電子系や、3d遷移金属の銅酸化物を中心とした高温超伝導物質、そして4d遷移金属のルテニウム酸化物の超伝導物質も強相関電子系の仲間です。
モット絶縁体
電子それぞれの状態を記述するバンド理論では金属になることが予想されるにもかかわらず、電子間斥力の効果(電子相関効果)によって電子が局在している絶縁体を指します。銅酸化物高温超伝導体の母体となる絶縁体や、巨大磁気抵抗を示すマンガン酸化物の母体、本研究対象のCa2RuO4などが挙げられます。
ルテニウム(Ru)
原子番号44の元素。元素周期表で鉄(Fe)の真下に位置します。金属化したCa2RuO4の電気伝導は主にルテニウムに由来する電子が担っています。有機化合物の合成では触媒としてよく用いられます。また、コンピュータのハードディスクでは記憶容量を増やすのに使われています。
カルシウム(Ca)
原子番号20の元素。元素周期表ではストロンチウム(Sr)の真上にあり、いずれも2価の正イオンになりやすく磁気的な性質は持っていません。Ca2RuO4のなかでは主に結晶格子の骨格をつくる役割を担います。
ケルビン(K)
絶対温度の単位。-273.15度がゼロケルビンに対応し、1ケルビンの温度差が1度の温度差と等しくなるように定義されています。
非平衡定常状態 (Non-equilibrium steady state)
熱や物質の流れがあるために熱平衡状態にはないが、流れの大きさが変化しない状態