ブラックホールに落ち込む最後の1/100秒の解明へ -ガスが最後に放つ高エネルギーX線を初めて捉えた!-

ブラックホールに落ち込む最後の1/100秒の解明へ -ガスが最後に放つ高エネルギーX線を初めて捉えた!-

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用語解説

はくちょう座X-1

初めてブラックホールと認知された天体。小田稔 理化学研究所元理事長がそのX線強度の奇妙な短時間変動から、ブラックホールである可能性を世界で最初に示唆した。

X線観測衛星「すざく」

「すざく」衛星は日本で5番目のX線観測衛星。日米協力により製作が進められ、2005年に打ち上げ成功し、現在も観測を続けている。「すざく」は2000年に打ち上げロケットの不具合により軌道投入できなかったAstro-E衛星の再挑戦をかけた計画である。

高温ガス

ガスを構成する分子が、非常に温度が高いために分子の形を保っておれず、完全に電離して、電子とイオンがバラバラになって自由に運動している状態にある。

最後の 1/100秒

これは固有時間(ガスとともに落ちていく観測者の感じる時間)のこと。私たちがブラックホールへ落下するガスを見ていると、ブラックホールに近づくにつれて速度が低下し、永遠に落ちていかないように見える。しかしこれは、ガスがブラックホールの表面に達する瞬間の情報が無限遠まで伝わらないという見かけの効果で、実際にはガスは落ちている。今回われわれが観測したのは、ガスが、ブラックホール表面に達する 1/100秒前に発した光である。

共同研究グループ

山田真也(理化学研究所)、嶺重慎(京都大学)、根來均(日本大学)、牧島一夫(東京大学、理化学研究所宇宙観測実験連携研究グループリーダー)、鳥井俊輔(東京大学)、野田博文(東京大学)らによるブラックホール連星の研究グループ。

硬X線検出器

「すざく」衛星に搭載されている硬X線検出器は、硬X線検出器チーム(東京大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、広島大学、金沢大学、理化学研究所、青山学院大学、大阪大学、米国スタンフォード大学の研究者ら) により開発された。10~600キロ電子ボルトという高いエネルギーを持ったX線(硬X線)を検出する装置。主検出部は、シリコン検出器とGSOという結晶シンチレーター(荷電粒子が通過すると蛍光する物質)で構成される。様々な工夫から極低バックグラウンドを実現している。

次期X線観測衛星「ASTRO-H」

X線観測衛星ASTRO-Hは、2015年の打ち上げを目指し、日米と世界中の研究者が総力をあげて開発を進めている。硬X線望遠鏡による撮像分光観測、世界初のマイクロカロリメータによる超高分解能分光観測、0.3キロ電子ボルトから600キロ電子ボルトと3桁以上過去最高の高感度・広帯域X線観測が可能になる。ブラックホールの周辺や超新星爆発など高エネルギーの現象に満ちた極限宇宙の探査や、高温プラズマに満たされた銀河団の観測を行い、宇宙の構造やその進化を探ることを目的としている。

偏光衛星「GEMS」

世界初のX線偏光観測専用衛星で、アメリカ航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターにより2014年以降の打ち上げを目指し、研究が進められている。理化学研究所玉川高エネルギー宇宙物理研究室もこの計画に参加し、独自開発したX線偏光計のコアデバイスを提供している。ブラックホール、中性子星、超新星残骸などからのX線偏光観測を実施し、宇宙物理の新しい分野を切り拓くことを目的としている。

太陽フレア

太陽大気(コロナ)で、磁場に蓄えられたエネルギーが急激に解放されガスが加熱され、太陽が紫外線やX線で明るく光る現象のこと。