DNA/RNAを分離・濃縮する熱泳動の分子構造依存性を解明 -温度勾配で分子を操作、構造変化を検出する新技術へ-
用語解説
熱泳動(Thermophoresis)
温度勾配に駆動されて、分子の濃度勾配が形成される輸送現象。発見者の名前にちなんで、ソーレ効果(The Soret effect)とも呼ばれる。
輸送現象(Transport phenomena)
電位や温度、物質の濃度が場所によって異なるとき、その勾配に応じてエネルギーや運動量、熱、他の物質が移動する現象。
拡散泳動(Diffusiophoresis)
分子の濃度勾配に駆動されて、別の分子の濃度勾配が形成される輸送現象。溶液中にコロイド粒子など固体表面をもつ粒子が分散し、表面近傍に分子の濃度勾配が存在すると、その濃度勾配に比例した流れが生じる。この流れにより固体分子が輸送される現象を指す。
コイル-グロビュール転移(Coil-globule transition)
長いDNA高分子が示す構造の変化。水溶液中ではDNAは広がったコイル状態にあるが、PEG分子や多価の陽イオンの存在下では折り畳まれて粒状に凝縮したグロビュール状態になる。
ステム-ループ(Stem-loop)
ヘアピンの形にも似た、RNAの構造を指す。一本鎖のRNAが部分的に相補的な塩基対を形成し二重らせん構造をもったステム(幹)をもつ一方で、他の部分では塩基対を形成せず一本鎖のループとなっている構造を指す。
熱水噴出孔(Hydrothermal vent)
火山活動が活発な海底の火山の割れ目から、地熱で熱せられた水が噴出する場所を指す。熱水の温度は400度に達し、周囲の2度の海水の間で大きな温度勾配が形成される。噴出孔の周りには豊富なイオンや化学物質が存在することが知られており、硫化物をエネルギー源とする細菌などが独自の生態系を形成している。
RNAワールド仮説(RNA world hypothesis)
自らの遺伝情報を次世代に継承する触媒能をもつ仮想的なRNAによる自己複製系。RNAが塩基配列に遺伝情報を保持しながら、化学反応を触媒する酵素(RNA酵素)としても機能する能力を備えることから、自己複製するRNAが現在の生命の前駆体であったとする仮説。