なぜ人間と高等サル類のみで色覚は進化したのか
2011年9月1日
正高教授
正高信男 霊長類研究所教授の研究グループは、人間がまだ子どもの段階で、視覚探索によってヘビをすばやく見つけるのに、色の情報がきわめて重要である事実を実験的に明らかにしました。この研究は9月1日のScientific Reportsに掲載されました。
研究の概要
哺乳動物の中で、人間のような高度に色覚を発達させた種はきわめて限られている。類人猿とアジアアフリカに棲むヒヒやニホンザルの仲間だけで、 中南米のサルやキツネザルなど原猿も未発達である。では色覚はなんのために進化したのかというと、意外にその機能は判明しないでいる。熟した果実をみつけやすいため、という説があるが、まったく推測の域を出ない。正高教授のグループは、人間がまだ子どもの段階で、視覚探索によってヘビをすばやく見つけるのに、色の情報がきわめて重要である事実を実験的に明らかにした。ちなみに哺乳動物でヘビを「本能的」におそれるのは、サル類でも色覚の発達した種にかぎられ、この一致は偶然とは考えられない。捕食動物の危険にもっともさらされる幼児期に、色覚をもつことで我々の祖先は生存確率を高めることに成功したのだと考えられる。
図1: 刺激の一例。左2枚はカラーの場合。右は白黒。 | 図2: 実験風景 |
図3: 4歳児から6歳児の白黒およびカラーの写真での、ヘビと花を検出する反応時間の比較 |
関連リンク
- 論文は以下に掲載されております。
http://dx.doi.org/10.1038/srep00080
http://hdl.handle.net/2433/145929 (京都大学学術情報リポジトリ(KURENAI)) - 以下は論文の書誌情報です。
S. Hayakawa, N. Kawai & N. Masataka.
The influence of color on snake detection in visual search in human children.
Scientific Reports 1, Article number:80, doi:10.1038/srep00080, Published 01 September 2011
- 京都新聞(9月2日 25面)、産経新聞(9月2日夕刊 10面)、中日新聞(9月2日 3面)、日刊工業新聞(9月2日 17面)、日本経済新聞(9月2日 38面)および毎日新聞(9月6日 23面)に掲載されました。