イオンを利用して細胞の外に蛋白質を運ぶメカニズムを初めて解明-原子レベルの膜タンパク質の構造から見えてきた仕組み-
用語解説
シグナル仮説
細胞内で運搬される蛋白質には、自身のN末端に荷札となる特徴的なアミノ酸配列が付加された状態で合成され、運搬途中に切断を受けるとの仮説。後に証明され、1999年ノーベル医学生理学賞の受賞につながった。
プロトン駆動力(PMF)
膜を隔てたプロトンの濃度差に起因する電気化学的ポテンシャル
SPring-8
兵庫県佐用町に位置する世界最大級の大型放射光施設で、強いX線を用いた実験が可能。
X線結晶構造解析
蛋白質等の生体高分子の立体構造を明らかにする手段の一つ。構造解析には、解析する分子から構成された結晶を得る必要がある。
AcrB
細菌に存在し、多くの薬剤排出に関与する膜蛋白質。膜貫通領域は水素イオンを透過させると考えられており、PMFを利用した薬剤排出を行う。
in vitro
直訳は「試験管内」。細胞からの抽出物等を用いた反応系による実験をさす。
パッチクランプ法
細胞膜を隔てたイオン等の透過を電気信号として検出する手法の一つ。
変異体解析
本研究では得られたSecDFの構造情報を基に、重要と推定されたアミノ酸残基を他のアミノ酸に人工的に置換してSecDFの解析を進めた。