用語解説
DNAオリガミ
2006年にカリフォルニア工科大学のPaul Rothemund博士により初めて報告された、約7000塩基の長い1つのDNAと、その構造を規定する数百本の短い留め金DNAを用いてナノ構造体を設計し、作成する技術のこと。DNAオリガミでこれまでに作成された構造体に対し、本研究成果で作成したナノ構造体は約10-30nmスケールと比較的小さい。
RNAとたんぱく質の複合体(RNP)
細胞内に存在するRNAの多くは、単独で機能を発現することはなく、たんぱく質との複合体(RNA-protein complex;RNP)として、存在している。このように生体内で重要な役割を果たすRNPを人工的に設計し、構築する技術は、これまでに達成されていなかった。
RNPモチーフ
RNA-たんぱく質の相互作用の基盤となる、生物種または分子を超えて保存された配列と構造を持つRNPの構成ユニットのこと。このRNP相互作用モチーフは、比較的単純で短い配列をもち、それ自身独立かつ安定な立体構造を形成できる場合が多い。
L7Ae
古細菌リボソーム大サブユニットに存在するたんぱく質の一つであり、リボソーム構築に必須の因子であるとともに、RNA塩基の修飾や、RNAを基盤とする遺伝子発現システムであるリボスイッチへの結合など、複数の機能を担う。本研究で用いたキンクターンRNAと強固に結合し、RNAの構造変化を誘導する性質を持つ。
キンクターンRNA
リボソームRNA中で発見された、天然RNA-たんぱく質の構造形成に重要な役割を果たすRNAモチーフの1つ。L7Aeが結合することで、RNAの構造変化(キンク)が誘導され、60度に折れ曲がる。このRNPは、結合親和性と特異性が高く、安定な複合体を細胞内外で保持できる。
リボソーム
全ての生物の細胞内に存在し、生存に必須の機能性超分子複合体である。mRNAの遺伝情報を読み取ってたんぱく質へと変換する機構である翻訳が行われる場である。大小2つのサブユニットからなり、これらは50種類以上のたんぱく質(リボソームたんぱく、ribosomal protein)と少なくとも3種のRNA(リボソームRNA、rRNA;ribosomal RNA)の複合体である。2000年、X線構造解析により立体構造が決定され、キンクターン RNAを含む、さまざまなRNPモチーフが見つかっている。