スマートマンションルームにおけるエコ生活実証実験の公開について~「エネルギーの情報化」実証実験(第一段階)~

スマートマンションルームにおけるエコ生活実証実験の公開について~「エネルギーの情報化」実証実験(第一段階)~

2010年8月25日


松山教授

 松山隆司 情報学研究科教授は、我が国独自のエネルギーマネジメント方式として、数年前から「エネルギーの情報化」という考え方を提唱し研究開発を進めるとともに、昨年5月からは産官学の連携組織として「エネルギーの情報化ワーキンググループ」(ホームページ:http://www.i-energy.jp/)を創設し、海外も含めた幅広い連携活動を展開して来ました。

 こうした研究開発活動が評価され、本年4月には、京都府と共に提案した経済産業省「次世代エネルギー・社会システム実証地域」にけいはんな学園都市が選ばれ、実際の生活環境を対象とした実証実験が始められようとしています。

 一方、エネルギーの情報化WGでは、本年初めから、松山研究室、株式会社エネゲート、オムロン株式会社、住友電気工業株式会社、大和ハウス工業株式会社、ローム株式会社、NICT委託研究「情報通信・エネルギー統合技術の研究開発」プロジェクトが主体となって、エネルギーの情報化を実現するための最先端技術を京都市内四条烏丸のマンションルームに導入し、日々の暮らしの中で気軽に省エネを実現するためのエネルギーマネジメントシステムを開発して来ました。

 このたび、エネルギーの情報化の有効性を示すための第一段階目のシステムが完成しました。

 なお、この実証実験は経済産業省に認定された「けいはんなエコシティ次世代エネルギー・社会システム実証プロジェクト」の先導的実証として位置付けられています。

概要

 松山教授の研究グループおよびエネルギーの情報化WGでは、エネルギーの情報化を実現するための第一段階として、家庭・オフィス内のすべての電気機器に、高精度電力計測・信号処理・通信機能を備えた「スマートタップ」を付け、エネルギー消費のリアルタイム計測・表示、人間・電気機器の安全安心見守り、省エネコンサルティング、高度な省エネルギー制御などを行うシステムの開発を進めています。

 今回、実証実験の第一段階として、1LDK(33平米)のマンションルーム内の全ての電気機器(約50台)に、松山研究室、株式会社エネゲート、オムロン株式会社、住友電気工業株式会社、ローム株式会社、NICT委託研究「情報通信・エネルギー統合技術の研究開発」プロジェクトがそれぞれ開発したスマートタップを付け、6月より実際の生活を行いデータ収集、分析を行って来ました。

  1.  スマートタップを使った、家電の詳細な電流・電圧特性や消費電力のリアルタイム計測と表示:
    京都大学で開発したスマートタップは、電流、電圧センサ、マイクロプロセッサ、無線通信ユニット、電力制御ユニットから成っており、20KHzという高速データサンプリングによって、電流、電圧波形を詳しく計測することができます。以下の(2)~(5)はすべてスマートタップの応用ソフトウェアとなっています。家庭・オフィス内の電気機器にスマートタップを付けることによって、機器毎の消費電力をリアルタイムに見ることができ、消し忘れ、待機電力の削減などによる省エネに役立ちます。
  2. 異なったメーカが開発したスマートタップを統合するホームサーバシステム:
    スマートタップは、国内外の多くの企業がそれぞれ異なった仕様のものを開発しています。利用者の視点からは、たとえ製造メーカが異なっていても、自由にスマートタップを組み合わせて使えることが望まれます。そこでエネルギーの情報化WGでは、京都大学松山研究室、株式会社エネゲート、オムロン株式会社、住友電気工業株式会社、ローム株式会社、NICT委託研究「情報通信・エネルギー統合技術の研究開発」プロジェクトがそれぞれ開発したスマートタップを自由に組み合わせて使うことができるように、OSGiと呼ばれるソフトウェアを使ってホームサーバシステムを開発しました。以下の(3)~(5)の機能は、このホームサーバ上の応用ソフトウェアとして開発されたもので、スマートタップの種類に依らず動作するように設計されています。(なお、京都大学が開発したスマートタップのような高機能なものは、すべての応用ソフトが動作しますが、低コスト化のために機能を絞ったものでは、一部の機能が動作しません。)
  3. スマートタップによる家電の自動認識:
    スマートタップで計測された電流波形には、下図のように接続された電気機器の特性が表れます。


    そこで、スマートタップで計測された精密な電流波形を解析することにより、どんな家電が繋がっているかを認識することでき、家電をコンセントに差すだけで、どこでどんな家電が使われているかが分かります。
  4. 消費電力の見える化による省エネ支援システム:
    消費電力の見える化を行い省エネ意識の向上や省エネ活動の誘発を実現するには、日常生活の中で気軽に消費電力を調べ無駄な電力をカットできることが重要となります。そこで、エネルギーの情報化WGでは、リビングのテレビに、スマートタップで計測された各家電の消費電力を3D表示し、ゲーム機を使って家電のON/OFFを切り替えることができるシステムを開発しました。このシステムを使えば、テレビ番組の間にいつでも気軽に省エネ活動が行えます。
  5. 家電の安全見守り・異常発見:
    先に述べましたように、スマートタップを使えば、上図のように詳細な電流波形が計測できます。もし、家電や電気配線、コンセントなどに不具合が生じると、この電流波形が変化すると考えられるため、いつもと異なった電流波形を観測したら、スマートタップがその家電の点検を促すメッセージをシステムに送り、システムが人間に知らせることによって、火災などの事故の予防が可能となります。

 

  • 京都新聞(8月26日 23面)、日刊工業新聞(8月26日 13面)、日本経済新聞(8月26日 37面)および読売新聞(8月26日 31面)に掲載されました。