2009年6月18日
本実験は、科学研究費補助金若手研究(S)「既存耐震施設の有機的連携による防災技術向上策の開発(研究代表者:高橋良和防災研究所准教授)」の一環として実施されたものであり、2009年6月18日の大学創立記念日に、防災科学技術研究所兵庫耐震工学研究センター(E-ディフェンス)において実施されました。同じ設計による16体の鉄筋コンクリート柱縮小試験体を世界最大の震動台上に並べ、一斉加振を行い各々の試験体の破壊までの過程を観測しました。
実験では、今まで得ることができなかった動的入力の同一性が確保された構造物の動的破壊挙動に関する記録が得られ、構造物の耐震性能の定量的評価法の確立に向けた研究が進展することになります。実験では柱が傾く程度まで大きく損傷しましたが、揺れた方向や幅に大きな差が見られず、実験後はほぼ同じ方向に傾いていたので、今の耐震設計の考え方は基本的に妥当であるということが確認されました。ただ個体ごとににばらつきがあることも事実であり、実験データをさらに解析して、今後の耐震設計に生かしていきたいと考えています。
また1~2年以内に得られたデータは一般公開され、構造物の動的挙動や耐震設計の基礎データとして利用されることが期待されています。
1.研究テーマ
既存耐震施設の有機的連携による防災技術向上策の開発
※ 本実験で得られた記録を用い、独立行政法人防災科学技術研究所と「構造物破壊過程における震動台の運転・制御に関する研究」に関する共同研究を進めています。
2.実験概要
- 入力地震動
兵庫県南部地震で観測された地震動(相似則に従い時間調整した波形) - 実験での主な検証項目
- 16体の縮小RC橋脚モデルの破壊挙動とそのばらつき(個体差)
- 試験体が破壊することによる震動台および加振システムに与える影響
- 試験体の概要
試験体としては、現行耐震設計を想定した道路橋脚の縮小模型を採りあげました。ただし、破壊に至るプロセスに関するデータを収集するため、上記入力地震動で大きく試験体が損傷するように調整しています。16体の試験体形状は同一で、その形状を図1に示します。試験体の高さは台座も含めて約3m、重錘は1.6m角、実験により破壊の想定される柱部は0.32m角であり、1体の質量は15tとなっています。これを図2に示しますように16体(計240t)の試験体を震動台上に等間隔に並べて設置し、震動破壊実験を行います。
![]() 図1 試験体の概要(単体) |
![]() 図2 震動台への試験体設置状態 |
3.実験結果の一例
地震動強度を150%にして入力し、柱基部が大きく損傷させたケースにおける重錘部の動きを図3に示します。同じように作られた構造物16体がほぼ同じように動いていること、ただしその動きには個体差もあり、ばらつきが見られています。
![]() 図3 柱基部が大きく損傷させたケースにおける重錘部の動き |
- 日刊工業新聞(6月19日 24面)および日本経済新聞(6月19日 38面)に掲載されました。