2008年10月10日
京都大学
株式会社日立製作所



左から、吉田 博史 株式会社日立製作所、長谷川 博一 工学研究科
准教授、竹中 幹人 工学研究科講師
長谷川 博一 工学研究科准教授と、株式会社日立製作所は、分子が自然に集合して微細なパターンを形成する自己組織化現象を活用することで、微細ドットパターンの高密度化を実現する、ナノパターニング基本技術を開発しました。
ナノパターニング技術は、半導体などの基板表面に微細なパターンを形成するリソグラフィ技術の一つで、従来と比べ、より微細なパターンを形成できる可能性があることから、電子デバイスの高機能化を実現する技術として注目されています。
今回、京都大学と日立は、この自己組織化現象を活用したナノパターニング技術において、基板表面を分子が集合しやすいように最適に加工する「化学的表面修飾技術」と、分子をより高密度に集合させる「高倍率パターン補間技術」を開発しました。これらの技術により、従来のナノパターニング技術に比べ、ドットの欠落を抑え、リソグラフィで形成する微細ドットパターンを9倍に高密度化することに成功しました。本技術は、半導体、記録装置やセンサーなどの電子デバイスの一層の高機能化に貢献するものです。
従来のリソグラフィ技術では、半導体分野を中心として、紫外光などの電磁波を用い基板表面に焼き付けて微細なパターンを形成する、フォトリソグラフィ法などの技術が広く普及しています。しかしながら、 パターンのサイズが電磁波の波長に迫るに従い、技術やコストの面からその限界が明らかになりつつあります。一方、自己組織化現象を活用したナノパターニング技術は、従来のフォトリソグラフィ法などと比べ微細なパターンの形成が可能なことから、次世代のリソグラフィ技術として注目されています。
このような背景から、京都大学と日立は、自己組織化現象を活用したナノパターニング技術の一つであるケミカルレジストレーション法に着目しました。ケミカルレジストレーション法は、基板の表面に、特定の分子だけが集まりやすいよう電子線によって化学的なマークを形成し、このマーク上に分子を集合させて円柱状の微細なドットパターンを形成させる技術です。
今回、京都大学と日立は共同で、このケミカルレジストレーション法で形成されるドットパターンをさらに微細化するために、分子が集合しやすいよう基板表面を最適に加工し、ドットパターンの欠落を低減させる「化学的表面修飾技術」を開発しました。また、基板上の化学的なマークとマークの間にも分子が集合したドットを挿入することで、より密度の高いパターンを形成する「高倍率パターン補間技術」を開発しました。
その結果、基板表面の100μm四方の領域に、電子線直接描画法(EB法)により周期72nmの化学的なマークを形成し、マークとマークの間にもドットを2個挿入することで、直径約14nmの円柱状の微細なドットを24nm間隔で形成することに成功しました。これは従来のリソグラフィ技術であるEB法で形成した化学的なマークのパターンと比べ、9倍の密度となるものです。また、EB法により形成した化学的なマークの位置や形状の乱れを補正できることも実証しています。
研究成果の概要
- 化学的表面修飾技術
ケミカルレジストレーション法においてドットパターンを形成する場合、特定の分子を集合させるために基板の表面にEB法を用いて化学的なマークを形成する必要があります。今回、基板表面に最適な加工を施し、分子の集合を最適化することで、従来よりも欠落の少ない良好なパターンを得ることができる「化学的表面修飾技術」を開発しました。 - 高倍率パターン補間技術
従来のケミカルレジストレーション法では、基板上に形成した化学的なマーク上に特定の分子を集合させることで微細なパターンを形成するものでしたが、最近では、マークとマークの間にも特定の分子が集合したドットを1個挿入することでパターンの密度を4倍にできることが実証されていました。今回さらなるドットパターンの高密度化のために、マークとマークの間にドットを2個挿入することで、パターンの密度を9倍にする「高倍率パターン補間技術」を開発しました。
電子線直接描画パターン密度の9倍化
- 産経新聞(10月11日 25面)に掲載されました。