2008年9月29日
左から、木村晃彦 教授、笠田竜太 助教
木村晃彦 エネルギー理工学研究所 教授らの研究グループは、ナノテクノロジーによる材料組織制御技術を駆使して、高温でも強く、錆びにくく、且つ、原子炉照射にも強い、三拍子の揃った革新的な原子炉燃料被覆管材料「スーパーODS鋼」の開発に成功しました。
研究成果の概要
京都大学エネルギー理工学研究所では、文部科学省が実施している公募事業「原子力システム研究開発事業(課題名:原子力システム高効率化に向けた高耐食性スーパーODS鋼の開発)」(代表:木村晃彦、共同研究機関:コベルコ科研、日本原子力研究開発機構、物質材料研究開発機構、北海道大学、名古屋大学、平成17~21年度、研究費総額:15億円)において、ナノテクノロジーによる材料組織制御技術を駆使して、高温でも強く、錆びにくく、且つ、原子炉照射にも強い、三拍子の揃った革新的な原子炉燃料被覆管材料「スーパーODS鋼」の開発に成功した。
粉末冶金法で製造した酸化物分散強化(ODS)鋼は高温強度に優れており、溶解法で製造される従来の鉄鋼材料に比べ、その強度が著しく高い。高強度ODS鋼は従来から存在するが、課題は実用化を妨げる高温での耐食性であった。
スーパーODS鋼は、高温強度や耐照射性能のみならず、超臨界圧水や液体金属中での優れた耐食性を兼ね備えており、それらを冷却材として用いる次世代原子炉の長寿命燃料被覆管としての使用が可能となる。次世代原子炉の安全性や経済性の飛躍的な向上が期待されている。また、スーパーODS鋼は、超臨界火力プラントの配管、自動車用鋼板や配管、鉛電池隔壁等、非原子力分野での応用も可能であり、広範な用途が見込まれている。
本成果は、旧電源開発促進対策特別会計法及び特別会計に関する法律(エネルギー対策特別会計)に基づく文部科学省からの受託事業として、京都大学が実施した平成18年度及び平成19年度「原子力システム高効率化に向けた高耐食性スーパーODS鋼の開発」の成果の一部です。
- 産経新聞(10月1日 25面)および毎日新聞(10月3日 21面)に掲載されました。