第51回玉城嘉十郎教授記念公開学術講演会「物質と情報のはざまで-非平衡・情報・アクティブマター-」

第51回玉城嘉十郎教授記念公開学術講演会「物質と情報のはざまで-非平衡・情報・アクティブマター-」

玉城教授記念学術講演会について

 玉城嘉十郎先生は、1886年のお生まれで、京都大学理学部において理論物理学を講じられ、在職中53歳の若さで他界されましたが、その門下からは新しい分野を拓く数多くの物理学者が輩出されました。
  ご他界後30年に当たり、先生のご意志に基づいて、ご遺族より奨学のために多額のご寄付をいただきました。
  そこで、先生を記念して毎年1回ないし2回、公開の学術講演会を開くことにしました。
  その第1回は1969年秋、大学紛争のさなか、湯川秀樹先生、朝永振一郎先生を講師に招き、開催しました。以後43年、回を重ねること、51回に達しています。
  講演のテーマは、必ずしも既存の専門にとらわれず、明日の学問への展望をひらくものを、と心がけて選ばれています。専門の研究者だけでなく学生諸君の参加も多く、またもとより公開でありますので、少数ながら熱心な一般聴衆の方々にも好評を博しています。

日時

2012年11月28日(水曜日)15時00分~17時15分

場所

京都大学益川ホール(北部構内:北部総合教育研究棟1階)

プログラム

  • 東京大学大学院理学系研究科 佐野 雅己 教授
     「アクティブマター:ミクロとマクロをつなぐ非平衡系の新たな視点」
    【講演概要】
    物理学は極微や極大の世界を探求するイメージがあると思いますが、その中間に広大なフロンティアが広がっていることをお話ししたいと思います。我々が注目するのは、企図したわけではないのに独りでに秩序や乱れができる現象、自己組織化と呼ばれる現象です。これらはエネルギーや物質が流れる非平衡系で起こることが特徴です。最近、実験技術が進み、アクティブマターという新概念ができつつあります。ミクロやメソのスケールでの非平衡性が物質や要素に動きを与え、自ら動く物質を創り出し、それらがさらに集まってマクロな秩序や乱れを生み出す現象が多くあることが明らかになってきました。自ら動くコロイド粒子の集団や生物分子モーターやバクテリアの集団が作る多彩で不思議な集団挙動にも一定の規則があるらしいことが分かってきたのです。アクティブマターという視点から、ミクロなゆらぐ世界の物理現象がどのようにしてマクロで生き生きとした現象へとつながるのかを述べます。
  • 京都大学大学院理学研究科 佐々 真一 教授
    「構成困難システムの物理法則」
    【講演概要】
    「私たちが生まれていつか死ぬ」という現象、「私たちが会話によって他人と相互作用する」という現象は、身の周りにありふれている。しかし、私たちは物質からできており、物理法則に粛々としたがっている。私があなたと喋るのも物理法則の結果として理解されるはずの現象である。この事実を意識した途端、日常にありふれている平凡な現象がことごとく驚異に満ちていることに気づく。この驚異の源を理解したいという動機にしたがって、自然現象の背後にある論理を探索している。多岐に渡る論点のひとつとして、「生物を人工的に作ることの困難さの起源は何か」という問題がある。これを「構成することが困難な物質の状態を物理法則によって理解せよ」とより抽象的に言い換えることで、理論物理の課題として成立する。講演では、最近の知見を踏まえつつ、この問題の醍醐味を伝えたい。

対象

学部生・大学院生・教員・一般

聴講料

無料

申し込み

不要

問い合わせ先

京都大学大学院理学研究科 社会交流室
〒606-8502 京都市左京区北白川追分町
FAX: 075-753-3645
E-mail: mail*cr.sci.kyoto-u.ac.jp (*を@に変えてください)

主催

京都大学理学部、財団法人湯川記念財団

参考URL

http://cr.sci.kyoto-u.ac.jp