2014年2月24日
近藤祥司 医学部附属病院老年内科講師、三河拓己 研究員(生命科学研究科PD)らの研究チームは、癌細胞では解糖系代謝亢進していることに注目し、細胞老化から癌化への変換のカギとなる解糖系制御機構解明に成功しました。
本研究成果は、2014年2月24日(米国東部時間)に、米国学術誌「Journal of Cell Biology」誌のオンライン版に公開されました。
今回の結果は、細胞が老化から癌化へと変換する際に、解糖系代謝酵素PGAMの分解制御が重要であるという初の知見です。一方で、私たちはすでに、動物モデルとして、PGAMトランスジェニックマウスや、PGAMノックアウトマウスを開発し、解析を進めています。
今後、PGAMの個体老化や個体癌化への影響を検証することで、将来新たな抗がん剤開発などの臨床応用に役立てたいと考えています。
概要
多くの通常細胞はさまざまなストレス(DNA障害、発癌ストレスや酸化ストレス等)により老化する一方、癌細胞は老化しないことが従来知られていました。このような「老化」と「癌化」という、正反対の細胞の運命を制御している機構の解明は、癌治療応用などに重要と考えられます。本研究グループは、癌細胞では解糖系代謝亢進していることに注目し、解糖系酵素の一つであるホスホグリセリン酸ムターゼPGAMが癌関連遺伝子Mdm2により蛋白分解制御を受けることを見出しました。通常細胞に老化を誘導する様々なストレスを加えると、アルキナーゼ(Pak1キナーゼ)がPGAMをリン酸化し、その後Mdm2によるユビキチン化という蛋白修飾を受け、PGAMは分解され、細胞は老化してしまいますが、逆に、PGAMを分解しにくい条件にすると、細胞は癌化することを見出しました。
詳しい研究内容について
細胞老化から癌化への変換のカギとなる解糖系制御機構解明に成功 -代謝を標的とした新しい抗がん剤開発に期待 -
書誌情報
[DOI] http://dx.doi.org/10.1083/jcb.201306149
[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/182929
Takumi Mikawa, Takeshi Maruyama, Koji Okamoto, Hitoshi Nakagama, Matilde E. Lleonart, Takeshi Tsusaka,
Kousuke Hori, Itsuo Murakami, Taisuke Izumi, Akifumi Takaori-Kondo, Masayuki Yokode, Gordon Peters,
David Beach, and Hiroshi Kondoh
"Senescence-inducing stress promotes proteolysis of phosphoglycerate mutase via ubiquitin ligase Mdm2"
Journal of Cell Biology Vol. 204 No. 5 729–745 Published February 24, 2014
掲載情報
- 日刊工業新聞(2月26日 19面)に掲載されました。