2020年秋号
輝け! 京大スピリット
山仕事サークル すぎよしたろう(杉良太郎)
会長 持留 匠さん
(農学部3回生)
渉外担当 雨森 大さん(農学部2回生)
真っ直ぐに伸びた杉の木に登り、雲の中を通るように生い茂った枝々をかいくぐる。木の頂上まで登りきった先に拡がるのは、さながら雲海の様な山の景色だ。「木を見上げることはあっても、木と同じ高さから一望できるのは山仕事ならではだと思います」。得意げに語るのは山仕事サークルすぎよしたろうの会長の持留匠さん。風変わりなサークル名だが、創部20年以上の歴史がある。
主な活動場所は、京都大学から北に自転車で1時間半の場所にある北区雲ケ畑地区。山主からの依頼を受け、枝打ちや除伐などの山仕事に精を出すほか、筍掘りや炭作りなどにも挑戦する。「山仕事では普段とは違う体や感覚の使い方をします。それが純粋に楽しい」。そう語る持留さんのように、山の中で体を動かしたいと入部した部員も多い。
自然のスケールの大きさを実感できるのも魅力の一つ。「植樹してから材木として収穫するまでに30年から80年はかかる。山の圧倒的な自然の中で、そういう大きなタイムスパンを肌で感じられるのは山仕事だからこそ」と、2回生の雨森大さんも言葉を重ねる。
すぎよしたろうは、漢字では「杉良太郎」と書く。そのため、雲ケ畑地区の住民からは親しみを込めて「すぎりょうさん」と呼ばれている。毎年秋には、地域の人たちと協力して「雲ケ畑森の文化祭」を開催。第17回の2019年は、鹿肉コロッケや納豆餅、木の枝で作る枝笛など、地域で採れる素材をアピールするブースが立ち並んだ。雨森さんたちも、自分たちで伐採したスギの葉を使用した「杉玉づくり体験」のブースを出展し、好評を得た。
雲ケ畑地区の魅力は山の自然だけではない。都を追われた惟喬親王の隠棲の地としても知られ、その他にも伝説や伝承が多く残るという。作業の合間に地域の人たちが雲ケ畑にまつわる話を熱く語りだすこともしばしば。歴史を感じさせる趣も魅力の一つだ。
そんな自然と歴史の魅力にあふれる雲ケ畑地区だが、明るい話題ばかりではない。「私たちの作業の成果はいつ表れるのか、そのときに山主さんやこの山里はどうなっているのか。活動しているとどうしても、現在の林業が抱える問題にぶつかります」。持留さんは真剣な顔でそう語る。山仕事サークルとしては何を目指すのか。雨森さんからは「現状維持です」という意外な答えが返ってきた。「ネガティブな意味ではないです。(笑)過疎化・高齢化が進む現状でこそ、私たちが山で活動し、山の魅力を発信し続けることに意味があると思いたい。林業は気の長い話です。私たちにできるのはその灯を絶やさないことかなと」。「すぎりょうさん」たちはこれからも林業の未来を繋ぎ続ける。