2019年秋号
輝け! 京大スピリット
民族舞踊研究会 部長
鳥居祐人さん (工学部3回生)
「伴奏がないと難しいな」。恥ずかしそうにはにかむ顔がきりっと引き締まり、軽やかなステップで踊り始めた。靴底で床を鳴らし、ブーツのシャフトを手でたたくと、太く鋭い音が空気を震わせる。ハンガリーの踊りを披露してくれた鳥居祐人さんは、4、50名の部員が集う民族舞踊研究会の部長を務める。
みんなで集まって踊る例会もあるが、ふだんは部員それぞれが踊りたい曲を選び独学で習得する。教材はYouTubeや資料ビデオ。ステップの順序や踊りの雰囲気を観察し、鏡の前で再現するという地道な練習の日々。毎年数回、海外から指導者を招いて開く講習会は貴重な時間。映像に残してなんども見返す。
踊りの好みは人それぞれ。激しくアクロバティックな踊りをマスターしてかっこよく見せたい人もいれば、穏やかな曲でゆったりと踊りたい人もいる。他大学の学生と踊る機会も多い。「出会いの数だけ新しい踊りと出会えます。みんなで手をつないで踊る曲は、人数が多いほど盛り上がります。隣の人の呼吸のリズムや体の動きを感じ取り、自分の動きとマッチする瞬間が気持ちいい」。
2回生の夏、「ハンガリーに行って踊りを披露しないか」と先輩に誘われた。「はい!」と二つ返事したものの、テスト週間にかぶっていた。「あとさき考えずに『やってしまった』と後悔しつつ飛行機に乗りましたが、現地に着いた途端に吹き飛びました」。京都大学からは8名が参加し、台湾と香港のフォークダンスチームとともにハンガリーの踊りを披露した。忘れられないのはその後に参加した酒場でのパーティ。地元の人に混じってお酒を飲み、いい気分になったところで演奏隊の出番。すると、曲に合わせてお客みんなが一緒に踊り出す。「現地の独特の雰囲気や生演奏ならではの臨場感は、日本では味わえない。今でも体が覚えています」。
鳥居さんがこの研究会を知ったのは新入生の頃。新歓でにぎわうキャンパスで「うちに来てくれたら、ご飯おごるよ」と、決まり文句で誘われた。「おごってくれるなら」と軽い気持ちでついて行った先で見た踊りに興味を持った。「飽き性で、新しいゲームを買ってもクリアする前にやめてしまうくらいです。そんな私がこの3年間は踊りっぱなし。(笑)新しい踊りをもっと知りたいという興味は尽きそうにありません」。
先輩の一声から踊りの輪に加わり、その輪は海外にまで拡がった。「経験や、国籍、年齢も違う人がごっちゃになって一緒に踊る。それが楽しいのです。卒業しても仲間とは踊りでつながっていたい」。今度は鳥居さんがその輪を後輩へと拡げる番だ。
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