経営管理大学院がシンポジウム「企業年金と退職一時金の制度を再考する」を開催しました。(2010年3月11日)

経営管理大学院がシンポジウム「企業年金と退職一時金の制度を再考する」を開催しました。(2010年3月11日)

 経営管理大学院は、百周年時計台記念館において、「企業年金と退職一時金の制度を再考する」(共催:みずほ証券株式会社)と題するシンポジウムを行いました。

 このシンポジウムは、みずほ証券寄附講座(企業金融)が2005年に経営管理大学院に設置されて以来、同寄附講座の教育、研究の成果を広くビジネス関係者と共有するという目的を持って、毎年春に東京、秋に関西で開催しています。これは、今後の日本経済の再生と発展をめざした基本的な改革に取り組むための知識を、大学と研究者の間でのみ保持するだけでなく、広く一般社会に向けて発信するという意図を持って定期的に行っているものです。

 今回は、企業年金と退職一時金の問題というトピックを取り上げました。昨今のニュースを賑わせている日本航空の例が象徴しているように、日本の高齢化社会が進むなかで、この企業年金と退職一時金の制度が大きな試練を経験しています。近年までの日本社会における福祉制度の一つの柱であったこの制度を、今後はどのように改善すればよいのか、あるいは全く新規の制度設計をする必要があるのかを、京都大学内の専門研究者だけでなく、同志社大学の橘木俊詔先生、ニッセイ基礎研究所の臼杵政治氏にもお越しいただき、それぞれの方々の違った立場から議論をしていただきました。     

 シンポジウムの前半では、次の3つの基調講演、講演を行いました。中井稔 経営管理大学院みずほ証券寄附講座教授からは「企業年金と退職一時金の制度の再考」、橘木 俊詔 同志社大学経済学部 教授からは「企業福祉の終焉」、臼杵 政治 ニッセイ基礎研究所 年金研究部長からは「退職給付企業年金の課題」です。

 その後、シンシポジウムの後半では、川北英隆 経営管理大学院教授の司会でパネルディスカッションを行い、西村周三 理事・副学長と吉田和男 経済学研究科教授も加わり、異なる立場から意見が述べられました。企業が従業員の福祉に積極的に関与する時代が終焉したことについては各論者が合意しましたが、それに替わる新しい主体、制度については対立した見解が錯綜し、とくに企業内福祉に替わるものとしての公的制度の整備を提案された橘木教授と、政府の役割には懐疑的な中井教授、西村理事・副学長の主張は平行線を辿り、この問題の難しさを浮き彫りにすることになりました。

 基調講演を行った中井教授は、事実上このシンポジウムをもって京都大学を退職することになるため、最後に西村理事・副学長から、同教授の学術、研究上の貢献を紹介する賛辞と記念品の贈呈がありました。今回のシンポジウムには、会場の収容人数を上回る120名以上の方々の参加がありました。参加者は熱心に白熱した議論を聴講しており、意義の深いシンポジウムとなりました。