2021年春号
輝け!京大スピリット
11月祭事務局
事務局長 柴田悠矢さん (総合人間学部3回生)
総合対応局総務担当 氣賀優太さん (法学部3回生)
例年10万人もの来場者を迎える11月祭は、関西最大級の規模を誇る学園祭だ。「学生の自主的・創造的活動の場」の理念に恥じず、オリジナルの脚本を上演する演劇やワニ肉料理を売る模擬店など、独創性に溢れる企画が立ち並ぶ。60年余にわたって学内外に親しまれてきた11月祭だが、昨年、その歴史に楔(くさび)を打ちこむ危機に直面した。
2020年3月、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、京都大学の課外活動は一斉自粛を強いられた。11月祭も例外ではなく、事務局は対面での実施を断念せざるをえなかった。「局員はみな、やるせなさで一杯でした。対面でないと魅力を伝えきれない企画も多いですから」。当時を振り返って悔しさを滲ませるのは、事務局長の柴田悠矢さん。祭りのオンライン開催は、なかば〈消極的な決断〉だったという。だが、脈々と続いた伝統を途切れさせないという思いが、事務局メンバーの背中を押した。
前代未聞のオンライン11月祭。実施に向けたノウハウはなく、事務局内では異論が噴出した。連日Zoomで会合を開き、朝4時まで熱論が続くことも珍しくなかったという。「納得のいくまで突き詰めるのが京大精神です」と、柴田さんたちは衒(てら)いなく笑う。
議論の中で、「オンラインだからこそ」を活かす発想も生まれた。新企画として考案した「バラエティ企画」は、趣味や日常生活など、学生から募集した個性豊かな動画を、11月祭公式ウェブサイトなどで公開するイベントだ。事務局主催の本部企画にはラジオ配信を追加。YouTubeで活躍する仮想キャラクターであるVTuberを取り入れたトークで、これまでにない盛り上げ方に挑戦することとなった。
第62回11月祭は、2021年3月、延期されながらも無事開催。来場者数は例年には及ばなかったが、祭りを絶やさなかったことに価値があると、柴田さんらは胸を張る。「オンラインという形でも、開催してくれてありがとう」。配信用動画の収録後、企画者たちが口々に述べた言葉だ。「毎年、11月祭を心待ちにしている人たちがいる。彼らの期待に応えられたことが、事務局の大きな喜びです」。
コロナ禍での開催を切り抜けた彼らに、後輩に残したい教訓を尋ねると、「自分たちがどうしたいのかを大切に」と一言。先輩の経験が、後輩の作りあげる祭りにおいても正しいとは限らない。「トレンドにとらわれないのが京大らしさ。代替わりとともに、事務局の在り方も変え続けてください」。次代へと託されてゆく11月祭は、今年も一味違う姿を披露してくれそうだ。
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