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輝け!京大スピリット

2021年春号

輝け! 京大スピリット

「女性だから……」ではなく、歩みたい道を選べる社会に

ジョ・ソウ(Xu Cong)さん
大学院総合生存学館 5回生

小原流の生け花を習い始めた頃の作品。思修館では生け花、書道、茶道など、日本の文化を学べる講座が開かれている

「日本文化の源流が身近にあるのは京都ならでは」。ジョ・ソウさんは小原流の生け花を始めて2年。「ほら見て!」と言わんばかりに、デビュー作から最新作までの写真を見せる。

総合生存学館(思修館)は、5年一貫制の博士課程大学院。気候変動や災害、紛争、エネルギー問題など、世界に共通する課題の解決策を考え、実践できる人材の育成を目指す。強い目的意識を持つ少数精鋭の同志たちに囲まれて、ジェンダー観がリーダーシップに与える影響を研究するジョさん。きっかけは中国でのある女性の言葉だった。「美容院で働くその女性は22歳くらい。両親から頼まれて、兄弟の学費や生活費のために働いているというのです。これはとても不公平。中国には同じ理由で働く女性がたくさんいます」。社会に根強く残る男性優位の価値観をどうすれば変えられるのか。修士課程を過ごしたイギリスで「リーダーシップ論」に刺激を受け、「リーダー像が変われば社会の価値観も変わるはず」と、今の研究テーマに辿りついた。

理論から実践へと視野が拡がったのは、4年次のインターンシップ。思修館では「武者修行」と呼ぶ1年間を、ジョさんはILOで過ごした。ILOは、女性や難民といった社会的に弱い立場の人が自立する手段として起業に注目し、起業のための独自のトレーニング・プログラムC-BEDを展開する。「ILOの支援の手法を、この目で確かめたかったのです」。

イギリスから中国に戻ったジョさんは逆カルチャー・ショックに。大阪、京都、富士山を巡った親友との旅行で「京都に住んでみたい」と決意し、見つけたのが思修館だった

C-BEDは、専門家の講師を呼ばず、参加者同士の議論やブレインストーミングで互いの知恵や経験を教え合う。オンラインで集まるので参加人数に制限はない。「スキルを必要とする人たちは経済的にも弱い立場。運営資金や受講料が安いので、参加のハードルが低く、現地の人たちのみで運営を続けることができます」。

「武者修行」を終えて京都に戻ると早速、働く母親層に呼びかけて試験プログラムを企画した。「日本のお母さんたちは家事や育児を一人でこなし、自分のための時間がほとんどありません。出産を機に仕事を辞める割合は欧米の先進国と比べると高いです。子どもを産んでもキャリアを積みたい女性を支援する方法をずっと考えていたんです」。参加者からは、「同じ境遇の仲間と出会えて嬉しい」との声が圧倒的に多かった。「新しい繋がりが生まれるのも、この手法の魅力です」。


「日本は同じアジア文化なので馴染みやすい」というジョさん。「困ったときは助けてくれ、いつもそばにいてくれる人情味溢れる友人関係が築けました」

その後は、総合生存学インパクトセンターの仲間とともにバングラデシュの女子大学生に特化したプログラム開発にも携わるなど、蓄積した知と経験が5年目に実を結び始めた。思修館の修了と30歳の節目を迎える2021年。目標を尋ねると「博士号を私への誕生日プレゼントにしたい」と一言。国籍や文化、ジェンダーの垣根を越えて手を取り合える社会に必要なのは、心の垣根も取り払ってしまうこんな魅力的な人間性なのかもしれない。

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