2020年秋号
輝け! 京大スピリット
体育会居合道部
主将 上松拓生さん(法学部3回生)
勢いよく立ち上がりながら抜刀、続けざま振り降ろす刀が縦一文字に空を裂く。凛とした緊張感が張りつめたまま、刀は鞘へと厳かに納められる。心技体を一つに繰り出す技の正確さや美しさ、迫力を競う武道が居合道だ。2019年に開催された第34回全日本学生居合道大会にて、京都大学居合道部は個人戦で優勝と準優勝、団体戦でも優勝という華々しい戦績を収めた。その団体戦に当時2回生としてただ一人出場したのが、現主将・上松拓生さんだ。
中学・高校での剣道の経験を活かしつつ、新しいことに挑戦したいと居合道部の門を叩いた。入部の決め手は体験会で見た先輩たちの姿。「練習を見ているだけで、先輩たちが上達に向けて真剣なのが伝わってきました」。週3日の正規練習に加え、自主練に取り組む部員も多い。練習開始の1時間前から武道場に集まり、ぶれることなく刀を振り続ける部員たちの姿に惹きつけられた。
己の内なる感覚を研ぎ澄ませば、自然と技が磨かれていくのが居合道、と思いきや、「そんな天才剣士ばかりではありません」と上松さんは笑う。むしろ、他の部員の一言が意外な突破口になるという。上松さんも、苦心しながら練習していた技が、先輩から「さっきの技よかったね」と声をかけられたことで得意技になった。「人から言われて腑に落ちることは多い。素振りや技の動きを部員同士で確認しあい、全員で上達を目指しています」。居合の技にはともに鍛錬した思い入れが宿る。
上松さんにとって大きな転機となったのは、2019年の全日本学生居合道大会での団体戦優勝。上松さんは当時の2回生で唯一ベンチ入りメンバーに選ばれた。「1試合だけの出場でしたが緊張で何も覚えていません。(笑)一人だけ2回生で実力の劣る私を先輩たちは引っ張ってくれた。改めて感謝の気持ちが強くなりました」。
「次は私の番だ」と、主将には自ら立候補した。先輩たちの背中を追ううちに、自ら部を牽引する気負いが生まれた。目指すのは京大居合道部の歴史でいまだ成し遂げられていない団体戦二連覇だ。「昨年の優勝は先輩たちの力。次は自分たちの力で優勝して、お世話になった先輩方や支えてくれる人たちに恩返ししたい」。
主将として、部の雰囲気を作ることにも意欲をみせる。「勝っても負けても、意見を交わし合い、成長に繋げたい。みんなで楽しみながら居合道を極めていければ」。上松さんの大らかな瞳には、一丸となって掴む二連覇への道筋がすでに映っているようだった。
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