2020年春号
輝け! 京大スピリット
ゴルフ部
田中 翔さん(文学部2回生)
3限終わりの農学部グラウンド。12月の寒空の下、団体球技の部員たちが猛々しい声を上げながら練習するかたわらに、柔和な表情で現れたのは、体育会ゴルフ部の田中翔さん。ゴルフ好きの父から入学祝いにもらったというゴルフクラブが鋭くもしなやかに弧を描く。ブレないスイングフォームは、チームメイトからも評価が高い。夏季休暇中も体幹を鍛える運動や自宅での筋トレなどを欠かさなかった自己鍛錬の賜物だ。「部員数が少ないので、それぞれの自主性を尊重しています。ゴルフは、それぞれの課題に向きあってひたすら打ち込めるのが特徴であり魅力です」。
京都大学体育会ゴルフ部は、関西学生ゴルフ連盟所属の国公立大学では屈指の実力。「本気でゴルフに打ち込める環境があり、努力しだいでレギュラーに食い込めるチャンスがあります。初心者はもちろん、経験者も飛躍的な向上が期待できます」。
みずからを分析肌だと語る田中さん。練習に打ち込むようになったきっかけを尋ねると、「2回生の頃、大会の出場枠がまだ空いているにもかかわらず、主将から告げられた役割はキャディ。初心者だったとはいえ、自分の無力を痛感しました」。悔しくて、ローリー・マキロイ選手のスイングを参考にし、自分のフォームを写真や動画で撮って研究したという。気づけば、ゴルフの練習が中心の学生生活に。
ゴルフはスキルが3割、精神力が7割といわれるスポーツ。リーグ戦では緊張のあまり本来のスキルを引き出せず、涙をのむこともしばしば。「どんな結果も自己責任。誰の力も借りられない状況で、いかに自分を高めるか。〈OBを打ってしまうのでは……〉と不安なとき、しきりなおして打てるのか。葛藤の経験が精神力を高めてくれます」。
精神面で参考にするのは、憧れの渋野日向子選手。「笑顔をつくることで、悲観しがちな弱いメンタルに打ち勝ち、自分を盛り上げるプレースタイルが憧れです。『冷静だが、心の奥底は燃えている』。そうしたゴルフ独特の精神状態に突入できると、安定感のある勝負強さにつながります」。部員たちが目標とする「スコア70台」にも手が届きそうだと語る眼には自信が満ちている。
「トライ・アンド・エラーを繰り返して考えるスポーツなので、クレバーな京大生は、きっとおもしろいと感じるはず。思い思いにみずからのプレーを追究できるのも『自由の学風』にぴったりです」。2年後は京都大学が主管を務める七大戦。4連勝をめざし、新入部員のナイスインに期待を寄せる。