2018年秋号
輝け!京大スピリット
心茶会 総務
横井理香さん
総合人間学部 4回生
「お点前は、動作を覚えてからが勝負なんです。手の動きが美しいか、お客さんの呼吸にあわせられているかなど、細部まで気を配ります」。おだやかな表情で素人の質問を聞き終えてから、丁寧に答える横井理香さん。高校の部活動で茶道を始め、大学でも続けたいと京都大学心茶会に入った。
横井さんがお点前でとりわけ気を配るのは間合い。「お点前の途中にお菓子を勧め、食べ終わる頃を見計らってお茶をたてます。お菓子が食べにくいようであれば、ゆっくりめに動作します」。心地よい間を感じながらインタビューできたのも、彼女の気配りからかもしれない。
京都大学心茶会の創立は1941年にさかのぼる。文学部哲学科の助教授として教鞭をふるっていた久松真一先生に、当時の学生が「茶道を教えてほしい」と直談判したことに始まる。
茶道はもともと禅宗の修行の一つ。禅の思想家の久松先生の精神を受け継ぐ心茶会では、稽古の前後に坐禅を組むのが設立時からの慣わし。
横井さんは、OBから教えてもらった〈久松先生のことば〉が忘れられない。「茶会となると、どうしてもお菓子代、お茶代がかかる。どうしたらよいか」という学生の相談に、久松先生はこう答えたという。「お菓子は吉田山の栗を採ってくればよいし、お茶が買えないなら白湯を出せばよい。大事なのはもてなしの心だよ」。
このことを実感したのが、3回生になって初めて運営を担当した3月の「卒会茶会」。卒業する先輩たちへの感謝の気持ちを込めた茶会で、心茶会のOBも招待する。会場のお寺選びにはじまり、当日の役割分担までを総務として担い、奮闘した。
茶会を終えた横井さんの心に深く刻まれたのは、苦心した思い出よりも、OBのお一人から届いたお礼状だった。「若々しくフレッシュさにあふれたよい茶会でした」と、感謝の気持ちを詠んだ短歌が添えられていた。
「茶会のあとに主催にお礼状を出すのはマナーですが、短歌まで詠んでくださった。ただただ、すごいと感動。当日は緊張過剰で、至らないこともあったはず。でも、温かく見守ってくださっていたんですね」。横井さんの凛とした表情が緩んだ。
「卒業という区切りまでは続けたい」と語る横井さんは、総合人間学部の4回生。「部活動も勉強も、完成に至らずとも、ひとつのかたちにしたい」。専攻は、意外にもキリスト教の美術史。茶の道を極めようとする彼女の好奇心は幅広い。この4年間に培ってきた彼女の心の器には、もてなしの心でつながった、たくさんの人との出会いがあふれている。
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