2016年秋号
輝け!京大スピリット
アメリカンフットボール部 ギャングスターズ
主将 佐々木雄矢さん(法学部4回生)
「公立高校の野球部時代は、日本一なんて夢のまた夢。でも、ここなら『日本一』は夢じゃない。勉強ばかりしてきた京大生が、スポーツ・エリートたちに立ち向かい、勝つ。こんなにおもしろいことはないと、自分の可能性にかけてみたくなった」。
183cm100kgの屈強な体に西陽をあびながら佐々木雄矢さんは言う。京都大学ギャングスターズ──かつて、だれもが想像だにしなかった「京大がスポーツで日本一」を成し遂げたアメリカンフットボール・チームだ。
1996年の甲子園ボウル優勝以降は苦汁の年がつづく。2014年には、創部以来初の関西学生リーグ2部リーグ降格の窮地に。「入替戦には会場に入りきらない4,500人の観客が集まりました。悔しさと重圧で、苦しい記憶として刻まれています」。1部残留を決め、魂を入れかえた翌年の成績は上々。ライバルの関西学院大学をはじめ、上位の強豪校との壁は厚いが、けっして勝てない相手ではない。
関西学生リーグ(2016年秋シーズン)甲南大学との公式戦。ボールを受け取った選手(20番)がボールを渡すフリをしたのち、エンドラインに走り込み得点をあげたようす。
ことしは40人もの部員が入部し、戦力面の地盤も固まりつつある。9割が初心者だが、佐々木さんもかつてはその一人。「野球経験もあり、体が大きいから、激しい勧誘を受けました」と当時を懐かしむ。腹を決めた入部後は厳しい鍛錬を重ね、いまではカレッジ日本代表に選ばれるほどに。学内外から一目置かれる存在だ。
練習のはじめにオフェンスとディフェンスの代表者が、それぞれのプライドをかけて体をぶつけ合うことで士気を高める。部員たちは自分のチームに力のかぎり声援を送る。
単位をとらなければ試合に出られないというルールを設けるなど、「熱中するあまり、学業はおろそかに……」という風潮もいまはむかし。小学生との交流会やごみ拾いなどのボランティア活動にも取りくみ、めざすは「だれからも応援されるかっこいい人」。情けない試合をすると、ファンから叱咤激励が届くこともしばしば。部のOBはもちろん、「京大が強いと、アメフト界が盛りあがるから」と他校のOBまでもが指導に訪れるなど、部員たちの本気は周りをどんどん巻き込み、その熱い渦はうねり、拡がってゆく。
多くの期待を背負い前進するギャングスターズ。グラウンドには、体と体とがぶつかりあう低く重い音にまじり、気迫のこもったエールや怒号が飛びかう。彼らの目には、かつての栄光ではなく、未来の光がはっきりと見えている。
2014年からは米国のプロリーグで活躍したアダム・スワードさんが専属コーチに就任。2013年に人工芝グラウンドも整備され、私立大学にも引けをとらない練習環境が整う
選手たちによるサイエンス教室や体づくりのトレーニングが学べる「小学生ぶんぶ両道教室」は小学生はもちろん保護者にも好評。合宿先の小豆島の小中学校でも交流会を開催している