藤井俊博 白眉センター特定助教らの研究グループは、アメリカユタ州で稼働中の 宇宙線検出器による11年間の定常観測において、北天(北半球) における最高感度で、極高エネルギー宇宙線がどの方向からより多 く到来するかを探索しました。
宇宙空間に存在する放射線は宇宙線と呼ばれ、1秒間に手のひらに 約1個という頻度で地上に到来しています。これまでの観測で1年 間に500平方kmあたり約1個というとても低い頻度ですが、 莫大なエネルギー(10の20乗電子ボルト)を有する「 極高エネルギー宇宙線」の存在が明らかになりました。このエネル ギーは、地上最大の粒子加速器で到達できるエネルギーより7桁も 大きく、宇宙のどこかに存在する爆発的なエネルギーを生み出す極 限宇宙現象が発生源と考えられています。本来、宇宙線は電荷を持 つために宇宙磁場で曲げられ、発生源についての情報を失い、 一様等方に地球へ到来します。しかし、宇宙線はエネルギーが増大 するにつれて曲がり角が小さくなり、10の19乗電子ボルト以上 では、45度の角度スケールで多く到来する方向と少ない方向(= 大角度異方性)が現れると予想されていました。
本研究では、測定データの解析により、8.8×10の18乗電子 ボルト以上のエネルギーの宇宙線が、赤道座標において赤経131 度の方向から3.3%多く到来している結果が得られました。この 測定結果は宇宙線の大角度異方性と銀河系外の宇宙線発生源の存在 を示唆しますが、まだ統計量が十分ではありません。今後は年間観 測事象数を4倍へ増やす拡張計画によって、さらなる高感度で極高 エネルギー宇宙線の定常観測を継続していきます。
本研究成果は、2020年7月27日に、国際学術誌「As trophysical Journal Letters」に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.3847/2041-8213/aba0bc
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/253550
R.U. Abbasi et al. (2020). Search for Large-scale Anisotropy on Arrival Directions of Ultra-high-energy Cosmic Rays Observed with the Telescope Array Experiment. The Astrophysical Journal Letters, 898(2):L28.