藤田健一 人間・環境学研究科教授、豊岡源基 同博士課程学生らの研究グループは、ジオール水溶液の脱水素化によるジカルボン酸合成の効率的合成を実現する、新しい触媒システムの開発に成功しました。
ジカルボン酸類は、ナイロンやプラスチックをはじめとする高分子化合物の製造原料として工業界において大規模に生産されています。しかし、ジカルボン酸の工業的生産のためには、枯渇性の有機資源が利用されることが多く、製造手法も有害な酸化剤が使用されているなど、改善が望まれます。本研究では、天然資源から持続的に入手できるジオール水溶液を原料として用い、有害酸化剤を使用しない触媒的手法によってジカルボン酸類を高効率的に得ることに成功しました。さらに特筆すべきは、有用有機化合物であるジカルボン酸だけでなく、エネルギーとして利用価値の極めて高い水素を同時に生産できることです。
今回開発した新規触媒系により、ジカルボン酸類の大規模生産が実現されたならば、高分子製造原料の革新的合成手段となるだけでなく、同時生成する水素を有効活用できるため、水素社会の発展に貢献できると期待されます。
本研究成果は、2020年7月8日に、国際学術誌「ChemSusChem」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1002/cssc.202001052
Genki Toyooka, Ken‐ichi Fujita (2020). Synthesis of Dicarboxylic Acids from Aqueous Solutions of Diols with Hydrogen Evolution Catalyzed by an Iridium Complex. ChemSusChem, 13(15), 3820-3824.
- 読売新聞(8月2日 28面)に掲載されました。