脳内地図を細胞レベルで観察 -自閉症関連遺伝子Shank2はランドマーク情報に必須-

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水田恒太郎 医学研究科助教、林康紀 同教授、佐藤正晃 理化学研究所客員研究員らの研究グループは、海馬と呼ばれる脳領域の活動を細胞レベルでリアルタイムに観察する脳活動画像化実験を行い、空間学習に伴う脳内地図の形成メカニズムと自閉スペクトラム症の関連遺伝子 Shank2 の機能を解明しました。

今回、本研究グループは、バーチャルリアリティ環境で空間学習を行うマウスの海馬の活動を、二光子レーザー顕微鏡と呼ばれる生体深部を観察できる高解像度の顕微鏡で画像化しました。その結果、海馬では学習が進むに従って「場所細胞」の数が増えること、およびこれらの場所細胞が形成する脳内地図において、特徴のある場所(報酬とランドマーク)で応答する細胞は他の場所で応答する細胞よりも安定化していることを発見しました。また、自閉スペクトラム症モデルの Shank2 遺伝子欠損マウスでは、脳内地図におけるランドマーク地点の細胞の数が増加しないことを見いだしました。

本研究成果は、ナビゲーションや記憶に関わる脳機能と、自閉スペクトラム症をはじめとする発達障害の病態の解明に貢献すると期待できます。

本研究成果は、2020年7月8日に、国際学術誌「Cell Reports」のオンライン版に掲載されました。

図:マウス用バーチャルリアリティシステム(左)と海馬の細胞活動の顕微鏡画像(右)

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.celrep.2020.107864

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/252467

Masaaki Sato, Kotaro Mizuta, Tanvir Islam, Masako Kawano, Yukiko Sekine, Takashi Takekawa, Daniel Gomez-Dominguez, Alexander Schmidt, Fred Wolf, Karam Kim, Hiroshi Yamakawa, Masamichi Ohkura, Min Goo Lee, Tomoki Fukai, Junichi Nakai 21, Yasunori Hayashi (2020). Distinct Mechanisms of Over-Representation of Landmarks and Rewards in the Hippocampus. Cell Reports, 32(1):107864.