臨床用iPS細胞を用いたパーキンソン病治療の非臨床研究を実施 -ヒトiPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞の安全性と有効性を確認-

ターゲット
公開日

土井大輔 iPS細胞研究所特定拠点助教、髙橋淳 同教授らの研究グループは、臨床用ヒトiPS細胞に由来するドパミン神経前駆細胞(DAP)の安全性と有効性を確認し、臨床試験のための品質規格を確立しました。

人工多能性幹細胞( iPS 細胞)由来のドパミン( DA )神経細胞は、パーキンソン病( PD )に対する細胞移植治療の材料として期待されています。しかし、多能性幹細胞を用いた細胞製剤の臨床応用に関する規制基準は標準化されていません。

本研究グループがDAPの特性をin vitroで解析したところ、未分化なiPS細胞や増殖性の初期神経幹細胞が含まれておらず、癌関連遺伝子にも異常はありませんでした。さらに、免疫不全マウスを用いたin vivo試験では、細胞の造腫瘍性や毒性は認められませんでした。またDAPをPDモデルラットの線条体に移植したところ、異常回転運動が改善しました。これらの結果に基づいて、PD患者に対する細胞移植治療の臨床試験(医師主導治験)を2018年に開始しました。

本研究成果は、2020年7月6日に、国際学術誌「Nature Communications」に掲載されました。

図:本研究の概要図(FCM: フローサイトメトリー、qPCR: 定量的PCR)

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41467-020-17165-w

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/252792

Daisuke Doi, Hiroaki Magotani, Tetsuhiro Kikuchi, Megumi Ikeda, Satoe Hiramatsu, Kenji Yoshida, Naoki Amano, Masaki Nomura, Masafumi Umekage, Asuka Morizane & Jun Takahashi (2020). Pre-clinical study of induced pluripotent stem cell-derived dopaminergic progenitor cells for Parkinson’s disease. Nature Communications, 11:3369.

  • 朝日新聞(7月29日 22面)に掲載されました。