分子活性の波が細胞集団に伝わる制御機構を解明 -細胞同士の綱引きが情報を遠くに伝える -

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日野直也 生命科学研究科 助教、松田道行 同教授、平島剛志 医学研究科 講師らの研究グループは、Xavier Trepat スペイン・ Institute for Bioengineering of Catalonia 教授、青木一洋 基礎生物学研究所 教授らと共同で、集団運動時に細胞同士が引っ張り合うことでERK分子の活性波が生み出されることを明らかにしました。

以前本研究グループは、細胞増殖を促進する「分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(Extracellular Signal-regulated Kinase、以下ERK)」の活性が、創傷治癒過程において波として伝播することを報告しましたが、その制御機構については多くの謎が残されていました。

本研究では、細胞が生み出す機械的な力に着目し、分子活性の可視化・操作技術、力の測定、数理モデルを組み合わせ、その謎に挑みました。その結果、細胞の引っ張り合いという力学的なシグナルがERK活性波を生成することがわかりました。細胞における力学-生化学の連成作用を明らかにした本研究は、今後の多細胞動態メカノバイオロジー研究の基盤になると期待されます。

本研究成果は、2020年6月4日に、国際学術誌「Developmental Cell」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究の概要図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.devcel.2020.05.011

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/253559

Naoya Hino, Leone Rossetti, Ariadna Marín-Llauradó, Kazuhiro Aoki, Xavier Trepat, Michiyuki Matsuda, TsuyoshiHirashima (2020). ERK-Mediated Mechanochemical Waves Direct Collective Cell Polarization. Developmental Cell, 53(8), 646-660.e8.

  • 日刊工業新聞(6月4日 19面)に掲載されました。