動的・静的筋力発揮に脊髄と大脳皮質一次運動野の帰還信号のループが別々に関わっていることを発見 -脊髄と脳の役割分担-

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武井智彦 白眉センター特定准教授は国立精神・神経医療研究センターと共同で、随意運動中に脊髄と大脳皮質一次運動野が、筋肉との間に別々の感覚運動ループを形成して筋力を発揮していることを明らかにしました。

本研究ではサルがひとさし指と親指でレバーを掴み(動的)、保持(静的)動作をしている際に、脊髄または大脳皮質一次運動野(運動野)から集団的な神経活動である局所フィールド電位(Local Field Potential;LFP)を上肢筋群の筋活動と同時に計測・記録しました。脊髄、運動野と筋電活動との機能的結合を表すコヒーレンス解析を行った結果、ベータ帯域(15-30Hz)において、動的時には脊髄と筋、静的時には運動野と筋とのコヒーレンスが顕著に現れることを発見しました。また、脊髄と筋との機能的結合が、ひとさし指や前腕の屈筋などの、つまむ(精密把持)ときに張力発揮に大きく貢献する筋群とその局所的なネットワークにみられ、運動野と筋との機能的結合は指の筋群と上肢全体とのネットワークが観察されました。さらに行った脊髄と筋、運動野と筋の信号の伝播の因果性解析では、それぞれ双方向性の相互作用がみられました。このことから、観察された機能的結合は帰還信号のループによってたち現れていることが示唆されます。このような動的、静的な運動における脊髄と運動野の役割の分担機構が発見されたのは初めてです。

本研究成果により、巧みな運動の制御を可能にしている神経機構の理解や運動機能障害に対する治療法の開発が進むと考えられます。

本研究成果は、2020年4月3日に、国際学術誌「Communications Biology」のオンライン版に掲載されました。

図:行動課題と脊髄、大脳皮質一次運動野、筋活動の記録

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s42003-020-0861-0

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/250222

Tomomichi Oya, Tomohiko Takei & Kazuhiko Seki (2020). Distinct sensorimotor feedback loops for dynamic and static control of primate precision grip. Communications Biology, 3:156.