電気自動車の完全普及によるCO2排出量削減の効果を解明 -パリ協定の気候目標達成には社会全体での取り組みが必須-

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藤森真一郎 工学研究科 准教授、張潤森 広島大学 助教らの研究グループは、将来の電気自動車の導入とそれによるCO 2 排出量削減の効果を明らかにしました。

現在の電気自動車の急速な普及によって、将来の自動車由来のCO 2 排出量は大きく変わることが予想されます。2015年のパリ協定では、国際社会は全球平均気温の上昇を2℃以下に抑え、温室効果ガスの排出を今世紀後半に実質ゼロまで下げるという気候安定化目標を掲げました。しかし、それに電気自動車がどのように貢献できるのかという問題はこれまで明らかとなっていませんでした。

本研究では、電気自動車の導入状況と交通部門以外の排出削減努力の進展度合いによって6通りのシナリオを設定し、コンピューターシミュレーションを行いました。その結果、電気自動車の導入により、エネルギー消費量は減少することがわかりましたが、発電システムが火力発電に依存する現状のままでは将来のCO 2 排出量はほとんど変わらず、全体としては正味で増加してしまうことがわかりました。さらに、仮に発電システムに再生可能エネルギーを大規模に導入したと仮定しても、2割程度のCO 2 削減にとどまりました。この結果は、パリ協定の2℃目標を達成するためには、交通という単一セクターの限定的な取り組みだけでは難しく、家庭・産業・交通といったエネルギー需要全体と共に、発電を含むエネルギー供給の脱化石燃料化といった社会全体での取り組みが必要であることを示唆しています。

本研究成果は、2020年2月19日に、国際学術誌「Environmental Research Letter」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究のイメージ図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1088/1748-9326/ab6658

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/245921

Runsen Zhang and Shinichiro Fujimori (2020). The role of transport electrification in global climate change mitigation scenarios. Environmental Research Letters, 15(3):034019.