ナノサイズの空間に閉じ込められた水が示す不思議な性質を実証 -高速で水素イオンを運ぶ水の状態を解明-

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北川宏 理学研究科 教授、大坪主弥 同助教、大竹研一 同博士課程学生(現・高等研究院物質ー細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)特定助教)らの研究グループは、合成ナノチューブの疎水性の内部空間で水が示す不思議な性質を解明しました。

水は、人が生きていく上で欠かせない、地球上で最もありふれた物質のひとつです。長年その性質が調べられてきた水ですが、ナノメートルサイズの疎水性空間の中では、これまでの常識とは大きく異なる不思議な挙動を示すことが、最近の理論研究で提唱されているのみでした。

今回、本研究グループは、直径およそ1ナノメートルの疎水性空間を持つ、形状の完全に揃ったナノチューブを合成して水を取り込ませました。そして、このナノチューブ内部の水分子の振る舞いについて実験的に詳細に調べました。その結果、4つの水分子の「塊」と8つの水分子の「塊」が規則正しく交互に繰り返される特異な氷の構造、水素イオン(プロトン)が高速で動く高いプロトン伝導性、さらには水と氷の状態の境目が不明瞭となる現象を観測することに成功しました。

このようにナノサイズの疎水性空間における水の特異な性質が実証されたことで、生体内の膜タンパク質が持つ高い物質輸送性能に対する理解が進展すると考えられます。さらに、本研究成果が、高効率な水の浄化膜や高機能な燃料電池といった、有用な材料の開発に貢献することも期待されます。

本研究成果は、2020年2月18日に、国際学術誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究のイメージ図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41467-020-14627-z

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/245708

Ken-ichi Otake, Kazuya Otsubo, Tokutaro Komatsu, Shun Dekura, Jared M. Taylor, Ryuichi Ikeda, Kunihisa Sugimoto, Akihiko Fujiwara, Chien-Pin Chou, Aditya Wibawa Sakti, Yoshifumi Nishimura, Hiromi Nakai & Hiroshi Kitagawa (2020). Confined water-mediated high proton conduction in hydrophobic channel of a synthetic nanotube. Nature Communications, 11:843.

  • 京都新聞(2月19日 31面)および日刊工業新聞(2月19日 26面)に掲載されました。