藤森真一郎 工学研究科准教授は、森林研究・整備機構森林総合研究所、立命館大学、国立環境研究所、東京農業大学と共同で、パリ協定が目指す長期気候目標(2℃目標)達成のための温暖化対策が、森林生態系を含む世界の生物多様性に与える影響を評価し、その結果、2℃目標の達成により、生物多様性の損失が抑えられることを予測しました。
温暖化を放置しておくと、気温上昇により生物の生息環境が悪化する恐れがあります。2℃目標達成のためには新規植林やバイオ燃料用作物の栽培といった土地改変を伴う温暖化対策が必要ですが、同時に生物のすみかも奪い、多様性を低下させてしまう可能性があります。
本研究では、2℃目標達成のための温暖化対策「あり」と「なし」それぞれの場合における将来の生物多様性損失の度合を、複数の統計学的な推定手法を使って、世界規模で比較しました。その結果、対策「あり」で2℃目標を達成した方が、「なし」のままで温暖化が進行してしまった場合と比べて、生物多様性の損失を抑えられることが示されました。
本研究成果は、2019年11月20日に、国際学術誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41467-019-13241-y
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/244880
Haruka Ohashi, Tomoko Hasegawa, Akiko Hirata, Shinichiro Fujimori, Kiyoshi Takahashi, Ikutaro Tsuyama, Katsuhiro Nakao, Yuji Kominami, Nobuyuki Tanaka, Yasuaki Hijioka & Tetsuya Matsui (2019). Biodiversity can benefit from climate stabilization despite adverse side effects of land-based mitigation. Nature Communications, 10:5240.