本庄三恵 生態学研究センター 研究員、工藤洋 同教授らのグループは、 植物体内のウイルス量変化や感染植物の遺伝子の応答を調べることによって、 野生植物とそれに感染するウイルスとの関係が季節の中でどのように変化しているのかについて明らかにしました。
本研究グループは、アブラナ科のハクサンハタザオの自然生育地において、感染した同植物の体内でのカブモザイクウイルスの量の変化を3年間に渡って追跡調査しました。また、植物の葉で機能している全遺伝子を対象に、ウイルス感染がどのように遺伝子の働きを変化させるかについて、RNAシーケンシングを用いて四季を追って明らかにしました。その結果、カブモザイクウイルスは一度感染すると植物体内から排除されず、季節に応じて植物体内での分布を変化させながら継続的に保持されるとともに、ハクサンハタザオは感染状態でも、季節ごとにウイルスへの防御法を変えながら長期にわたって生存・成長し、開花・結実や栄養繁殖を行うことが明らかになりました。
本研究は年間を通して宿主植物とその体内のウイルスの季節変化を明らかにした初めての成果であり、これまで作物の病気として扱われてきた植物ウイルスを、生物多様性の構成要素として生態学の研究対象とするきっかけとなるものです。
本研究成果は、2019年10月30日に、国際学術誌「The ISME Journal」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41396-019-0519-4
Mie N. Honjo, Naoko Emura, Tetsuhiro Kawagoe, Jiro Sugisaka, Mari Kamitani, Atsushi J. Nagano and Hiroshi Kudoh (2020). Seasonality of interactions between a plant virus and its host during persistent infection in a natural environment. The ISME Journal, 14(2), 506-518.