荒井宏行 ウイルス・再生医科学研究所 研究員、瀬原淳子 名誉教授( ウイルス・再生医科学研究所 連携教授)は、iPS細胞研究所、理化学研究所、広島大学、岐阜大学、英国・Newcastle大学と共同で、心臓の中に軟骨ができないようにする仕組みが備わっていることを発見しました。
動物の体が形作られる過程で、細胞は適切な場所で適切な機能を持つ細胞になるため、制御を受ける必要があります。様々な細胞へ変化(分化)する能力をもつ神経堤細胞の分化制御については、どのように誘導されるのかについては多くの研究がされていましたが、どのように抑制されるのかについては不明な点が多く残されています。
本研究では、心臓神経堤細胞と呼ばれる一部の神経堤細胞集団に、軟骨形成・分化を抑制するメカニズムが備わっていることと、細胞膜型プロテアーゼであるAdam19がその抑制因子として働くことが明らかになりました。これらの結果から、細胞分化の誘導因子だけではなく、抑制因子の働きが異常な組織への分化を抑え、複雑な組織の形成を可能にしていると考えられます。
本研究成果は、Adam19またはその活性化因子が、異常な軟骨分化の抑制因子として、進行性骨化性線維異形成症(FOP)など異常な軟骨形成・分化の病態を示す病気の治療に応用できる可能性を示唆しています。
本研究成果は、2019年10月16日に、国際学術誌「Cell Reports」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.celrep.2019.09.019
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/244338
Hiroyuki N. Arai, Fuminori Sato, Takuya Yamamoto, Knut Woltjen, Hiroshi Kiyonari, Yuki Yoshimoto, Chisa Shukunami, Haruhiko Akiyama, Ralf Kist and Atsuko Sehara-Fujisawa (2019). Metalloprotease-Dependent Attenuation of BMP Signaling Restricts Cardiac Neural Crest Cell Fate. Cell Reports, 29(3), 606-616.e5.
- 日本経済新聞(10月28日 9面)に掲載されました。