片山高嶺 生命科学研究科教授らの研究グループは、2’-フコシルラクトース利用に関わるビフィズス菌の2つのトランスポーター(FL transporter-1およびFL transporter-2)を同定して詳細に解析すると共に、FL transporter-2の適応進化によって、ビフィズス菌が2’-フコシルラクトース以外のフコシル化母乳オリゴ糖を効率的に利用可能となり、このことがビフィズスフローラ形成に深く関わっていることを明らかにしました。
母乳哺育をすると乳児の腸内でビフィズス菌が増える(ビフィズスフローラを形成する)ことが100年近く前から知られており、それには母乳に含まれるオリゴ糖成分(母乳オリゴ糖)が関与していることが分かり始めてきました。これを受けて、欧米では母乳オリゴ糖の主成分の一つである2’-フコシルラクトースを調製乳に添加し始めていますが、ビフィズス菌がどのようにして2’-フコシルラクトースを利用しているのか、またそれが乳児腸管におけるビフィズスフローラ形成にどのような影響を及ぼしているのかは詳細には解明されていませんでした。
本研究成果は、調製乳への2’-フコシルラクトース添加の科学的根拠を示すだけでなく、今後、調製乳への母乳オリゴ糖添加にはビフィズス菌の特性を良く理解することが必要であることを示しています。
本研究成果は、2019年8月29日に、国際学術誌「Science Advances」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1126/sciadv.aaw7696
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/243878
Mikiyasu Sakanaka, Morten Ejby Hansen, Aina Gotoh, Toshihiko Katoh, Keisuke Yoshida, Toshitaka Odamaki, Hiroyuki Yachi, Yuta Sugiyama, Shin Kurihara, Junko Hirose, Tadasu Urashima, Jin-zhong Xiao, Motomitsu Kitaoka, Satoru Fukiya, Atsushi Yokota, Leila Lo Leggio, Maher Abou Hachem and Takane Katayama (2019). Evolutionary adaptation in fucosyllactose uptake systems supports bifidobacteria-infant symbiosis. Science Advances, 5(8):eaaw7696.