刺しゅう枠で皮膚の線維構造を解明 -コラーゲンと弾性線維の網目構造-

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齊藤晋 医学研究科 講師、上田真帆 医学部附属病院医師(非常勤)・キャリア支援診療医 らの研究グループは、刺しゅう枠から着想した組織伸展器でヒトの皮膚を伸展し、組織透明化処理と多光子顕微鏡を用いて3次元観察を行った結果、コラーゲン線維と弾性線維が同じ方向に分布すること、またそれらが網目状に分布することを明らかにしました。

皮膚の真皮は無数のコラーゲン線維や弾性線維で構成されています。これまで真皮は、コラーゲン線維が無秩序に交錯する、不織布のような構造と考えられてきました。弾性線維は、皮膚に弾性を与えますが、どのように分布してコラーゲン線維と関わっているかは明らかではありませんでした。

本研究グループは、真皮内でコラーゲン線維がたわんで密集している状態が、真の構造を解明する妨げとなっていると考えました。本研究では刺しゅう枠の方式でヒトの真皮を全方向に等しく伸展(2軸伸展)し、コラーゲンのたるみを除去しました。組織透明化処理を加えて多光子顕微鏡で3次元観察し、解析を行うと、コラーゲン線維が網目状に交差する構造が明らかになりました。また弾性線維はコラーゲン線維の束に沿って、コラーゲン線維と同じ方向に分布することが分かりました。

線維性臓器では、構造と機能は密接に関係しています。皮膚の線維構造を理解することは、皮膚のしなやかさのメカニズムを知る上で極めて重要です。また将来、健常に近い特性を持つ皮膚再生にも役立つと考えられます。さらには、本研究で用いた伸展法は、他の線維性臓器の研究への応用も期待されます。

本研究成果は、2019年7月23日に、国際学術誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究のイメージ図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41598-019-47213-5

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/243194

Maho Ueda, Susumu Saito, Teruasa Murata, Tomoko Hirano, Ryoma Bise, Kenji Kabashima & Shigehiko Suzuki (2019). Combined multiphoton imaging and biaxial tissue extension for quantitative analysis of geometric fiber organization in human reticular dermis. Scientific Reports, 9:10644.

  • 朝日新聞(7月24日 33面)、京都新聞(7月24日 31面)および日刊工業新聞(8月6日 21面)に掲載されました。