川口ゆり 霊長類研究所・ 日本学術振興会特別研究員、狩野文浩 高等研究院 特定准教授、友永雅己 霊長類研究所 教授らの研究グループは、チンパンジーが自種のおとなより乳児をよく注視することなどを発見しました。
ヒトは自種や他種の乳児を好むことが知られていますが、ヒト以外の霊長類でも同様の選好がみられるのかについてはわかっていませんでした。本研究ではヒトに近縁なチンパンジー、ボノボに対して同種や他種の母子の写真を呈示し、視線計測をおこないました。その結果、チンパンジーは同種に対しては乳児をより長く注視しましたが、モノクロにした画像や他種の画像に対して差はみられませんでした。
また、ボノボでは同種のおとなと乳児に対する注視時間に差はありませんでした。チンパンジーはボノボでは見られない子殺しが報告されており、乳児は肌の色がおとなと異なります。チンパンジーの乳児への注視傾向はこうした乳児の生存リスクや外見的な特徴と関係していると考えられます。
本研究成果は、ヒトの養育行動がどのように進化してきたのかを知る上での手掛かりになると考えられます。
本研究成果は、2019年7月18日に、国際学術誌「Animal Behaviour」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.anbehav.2019.06.014
Yuri Kawaguchi, Fumihiro Kano, Masaki Tomonaga (2019). Chimpanzees, but not bonobos, attend more to infant than adult conspecifics. Animal Behaviour, 154, 171-181.