松本卓也 理学研究科 博士課程学生(現・総合地球環境学研究所外来研究員)は、野生チンパンジーの子が母親と一緒に食事をするだけでなく、母親と異なるタイミングにおいても食事をするという現象に着目し、子の食べ方に関する詳細な観察と分析を行いました。
その結果、子は母親と一緒に食べる際には果実など「栄養価が高く」、「環境中で限られた場所にしかない」食物を食べる一方で、母親と異なるタイミングでは「大人が食べない食物」を含めて、地上性草本の茎部など「環境中にありふれていて」、「年中食べられる食物」を高い割合で食べていることを明らかにしました。
母親と異なるタイミングで食事をとる理由として、子は大人よりも基礎代謝が高く、また消化器官が小さいために、「間食」をとる必要があるのだと考えられます。また、このようなチンパンジーの子の食べ方の特徴は、多くの点で現生の狩猟採集民の子の食べ方と共通しています。
本研究成果は、初期人類の子が、大人から食事を与えられるだけの受動的な存在ではなく、積極的な採食者としての側面を持っていた可能性を示唆します。
本研究成果は、2019年6月14日に、国際学術誌「Journal of Human Evolution」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.jhevol.2019.05.009
Takuya Matsumoto (2019). Opportunistic feeding strategy in wild immature chimpanzees: Implications for children as active foragers in human evolution. Journal of Human Evolution, 133, 13-22.
- 産経新聞(6月21日 24面)、中日新聞(8月16日 25面)、毎日新聞(9月4日 21面)、日本経済新聞電子版(6月20日)、神戸新聞NEXT(8月15日)、@S 静岡新聞SBS(8月15日)、下野新聞 SOON(8月15日)、東京新聞(Tokyo Web)(8月15日)、徳島新聞電子版(8月15日)および北海道新聞電子版(8月15日)に掲載されました。