ゲノム編集技術を用いて拒絶反応のリスクが少ないiPS細胞の作製に成功

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※一部内容を訂正しました。(2019年3月12日)

徐淮耕 医学研究科博士課程学生、王博 iPS細胞研究所研究員、金子新 同准教授、堀田秋津 同講師らの研究グループは、ゲノム編集技術のCRISPR-Cas9を用いて、他家移植の際に免疫拒絶のリスクが少ないiPS細胞を作る2つの方法を開発しました。

細胞移植の際に、レシピエント(移植患者)とドナー(細胞提供者)のHLA(ヒト白血球型抗原)型が一致しないと、移植したドナー細胞はレシピエントのキラーT細胞からの攻撃を受けます。また、ドナー細胞のHLAが消失していると、ドナー細胞はレシピエントのNK細胞からの攻撃を受けます。

しかし、本研究グループが開発した手法で作成したiPS細胞由来細胞は、こうした仮想レシピエントのキラーT細胞とNK細胞の攻撃を受けにくくなることが確認されました。また、本手法を用いると、 7 種類のiPS細胞株によって、日本人の95%以上をカバーできると試算され、12種類のiPS細胞株によって世界的なカバー率の向上が可能になることが考えられます。

本研究成果は、2019年3月8日に、国際学術誌「Cell Stem Cell」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究の概要図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.stem.2019.02.005

Huaigeng Xu, Bo Wang, Miyuki Ono, Akihiro Kagita, Kaho Fujii, Noriko Sasakawa, Tatsuki Ueda, Peter Gee, Misato Nishikawa, Masaki Nomura, Fumiyo Kitaoka, Tomoko Takahashi, Keisuke Okita, Yoshinori Yoshida, Shin Kaneko, Akitsu Hotta (2019). Targeted Disruption of HLA Genes via CRISPR-Cas9 Generates iPSCs with Enhanced Immune Compatibility. Cell Stem Cell, 24(4), 566-578.e7.

  • 朝日新聞(3月8日 33面)、京都新聞(3月8日 3面)、産経新聞(3月8日 3面・26面)、日刊工業新聞(3月8日 29面)、日本経済新聞(3月8日 39面)、毎日新聞(3月8日 26面)および読売新聞(3月8日38面)に掲載されました。