向井啓祐 エネルギー理工学研究所助教、笠田竜太 東北大学教授、中道勝 量子科学技術研究開発機構増殖機能材料開発グループリーダーらの研究グループは、エネルギーの低い軟X線の分析によって、世界ではじめてベリリウム金属間化合物(ベリリウムとその他の金属で構成される化合物)の価電子構造を明らかにし、化学状態分布を解析することに成功しました。
新材料の開発において、電子顕微鏡観察や元素マッピングによって試料の微細構造情報を得ることは不可欠な手法となりますが、軽元素であるベリリウムはX線発光効率が低いため、従来の実験室レベルの手法ではマイクロスケールの化学状態分布を得ることはできませんでした。
本研究では、ベリリウムから発生する低エネルギーの軟X線発光スペクトルを高いエネルギー分解能で測定できる軟X線分光器を用いました。本研究手法では、ベリリウム化合物や酸化物相のミクロな化学状態分布を可視化できるため、核融合炉などの高温環境で利用される機能性ベリリウム化合物の開発に役立つことが期待されます。
本研究成果は、2019年3月7日に、国際学術誌「Applied Energy Materials」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1021/acsaem.9b00223
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/241264
Keisuke Mukai, Ryuta Kasada, Kiyohiro Yabuuchi, Satoshi Konishi, Jae-Hwan Kim, and Masaru Nakamichi (2019). Valence Electron and Chemical State Analysis of Be₁₂M (M = Ti, V) Beryllides by Soft X-ray Emission Spectroscopy. ACS Applied Energy Materials, 2(4), 2889-2895.