本田直樹 生命科学研究科准教授、松井貴輝 奈良先端科学技術大学院大学准教授らの研究グループは、体内時計が細胞どうしを協調させて、動物のからだを正確に形作る仕組みを明らかにしました。
受精卵からからだが正しく形作られるためには、生体内の現象が正確にコントロールされている必要があります。しかし、からだを構成する一つ一つの細胞は機械のように精密ではなく、いいかげんでノイズに満ちており、同じ条件でも常に全く同じように働くわけではありません。
どのように動物のからだは正確に作られるのかという問題において、本研究グループは、数理モデルと実験を組み合わせた研究を行いました。その結果、体内時計の働きによって、発生過程で体軸に沿って繰り返し作られる構造で将来できる背骨などの元となる「体節」が、再現性よく作られるメカニズムを解明しました。
本研究は、体内時計の刻むリズムがノイズをキャンセルし、オーケストラの指揮者のようにバラバラに振る舞う細胞たちを協調させることで、発生過程が正確にコントロールされていたことを見出しました。
本研究成果は、体節形成の高い再現性を保証する仕組みの一端を初めて明らかにしたものですが、今後、ヒトの発生疾患(脊椎肋骨異常症など)の予防や治療につながることが期待されます。
本研究成果は、2019年2月4日に、国際学術誌「PLoS Computational Biology」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1371/journal.pcbi.1006579
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/236297
Honda Naoki, Ryutaro Akiyama, Dini Wahyu Kartika Sari, Shin Ishii, Yasumasa Bessho, Takaaki Matsui (2019). Noise-resistant developmental reproducibility in vertebrate somite formation. PLOS Computational Biology, 15(2):e1006579.