柳田素子 医学研究科教授、中村仁 同博士課程学生(現・アステラス製薬)らの研究グループは、これまでの考えとは逆に、腎臓の「線維化」が腎臓を修復する可能性を見出しました。
慢性腎臓病は10人に1人が罹患する国民病で、慢性腎臓病が進行すると腎臓の「線維化」が認められるため、従来は「線維化」が腎機能を低下させると想像されていました。
本研究グループは、先行研究で、「尿細管」(腎臓の中で尿が通る管)が障害されると、周囲の「線維芽細胞」の性質が変わって線維化が起きることを見出しています。本研究では、尿細管にはもともと自分自身を修復する「レチノイン酸」の合成能があること、尿細管が障害されるとその合成能が失われる一方で、障害尿細管の周囲の線維芽細胞がレチノイン酸産生能を獲得し、障害尿細管の修復を助ける可能性を発見しました。
本研究成果は、線維化が腎臓を修復する可能性を示唆しています。現在、線維化が腎臓病の悪化因子のように考えられ「線維化治療薬」が開発されていますが、本研究は、「線維化治療薬」の問題点を示唆するとともに、尿細管を修復する重要性を裏付けています。
本研究成果は、2019年1月17日に、国際学術誌「Kidney International」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.kint.2018.10.017
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/236048
Jin Nakamura, Yuki Sato, Yuichiro Kitai, Shuichi Wajima, Shinya Yamamoto, Akiko Oguchi, Ryo Yamada, Keiichi Kaneko, Makiko Kondo, Eiichiro Uchino, Junichi Tsuchida, Keita Hirano, Kumar Sharma, Kenji Kohno, Motoko Yanagita (2019). Myofibroblasts acquire retinoic acid–producing ability during fibroblast-to-myofibroblast transition following kidney injury. Kidney International, 95(3), 526-539.
- 京都新聞(1月25日夕刊 8面)および読売新聞(1月19日夕刊 8面)に掲載されました。